IHIが芸術家らとの交流拠点を構えた理由

IHI取締役常務執行役員・村上晃一氏に聞く

 IHIは5月、技術開発拠点である横浜事業所(横浜市磯子区)に「IHIグループ横浜ラボ」を開所した。ラボには客と課題を議論する共創エリアや、着想をその場で試作するガレージなどがあり、オープンイノベーションを推進する。オープンイノベーションの進展状況と今後の戦略を技術開発本部長である村上晃一取締役常務執行役員に聞いた。(編集委員・嶋田歩)

 ―東北芸術工科大学の学生やデザイナー、アーティストなどと交流を始めています。従来の交流と特に変わった点は。
 「学生にしてもデザイナーにしても、目の付け所が我々と違う。我々技術者は電気プラントを設計する時も発電効率がどうだとかを重視するが、彼らが考えるのは生活者の発想。再生エネルギーならクリーンなエネルギーだから、それを使って街全体をどうしようとかを考える。BツーB(企業間)でなく、BツーC(対消費者)。非常に新鮮だ」

 ―アーティストは。
 「自分の理想を追求して一心不乱。他人と同じものを作るのは最大の侮辱だと感じる。彼らと交流すると、我々技術者も刺激を受ける。さまざまなイノベーションの種が、そこに転がっている」

 ―米国シリコンバレーにも昨年11月に交流拠点を設立した。
 「ロボットベンチャーの人工知能(AI)と、それを応用したデパレタイズシステムは商品化済み。引き続き近隣のスタートアップ企業や大学とも、共同研究をいろいろ進めている。大学との交流では国内の複数大学とも、AI研究などを始める予定だ」

 ―交流も大切ですが、企業の立場としては最終的に商品や利益に結びつけなければなりません。ポイントは何ですか。
 「仲良しクラブ的な交流でなく、一定の緊張感が必要だと思う。緊張感があるから互いにダメ出しし、さらに上の議論に進める。もうひとつはスケジュールだ。議論を始める時に今日はこれとこれは決めましょうというように、最初に目標を示す。決める姿勢が大切」

 ―事業内容が幅広いですが、特に強化したい分野は。
 「環境エネルギーや産業機械は案件が多い。ただ最近は領域を超える、あるいはまたがる案件が増えている。オープンイノベーションの出番だと思う」

IHI取締役常務執行役員・村上晃一氏

【チェックポイント/“技術屋の殻”打ち破る】
IHIはグループ経営方針で、客の課題に真正面から取り組むことを目標に掲げた。ただ“客”の中身は電力会社だったり、消費者だったりと、さまざまだ。今後は女性や特定年代向けの製品開発も必要になるかもしれない。そんな時、求められるのは利用者の発想であり、技術屋の発想だけでは限界がある。外部のアイデアや意見を取り入れることで製品の広がりが期待される。

日刊工業新聞2019年8月20日

  

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