CT画像をAIが前処理、放射線科医の有能な“助手”に

富士フイルムが開発

 富士フイルムが開発した人工知能(AI)で放射線科医を支援するシステム「SYNAPSE SAI viewer(シナプス・サイ・ビューワ)」は、放射線科医の診断の前にAIが「前処理」を済ませて作業量を軽減する。コンピューター断層撮影装置(CT)で撮影した画像をAIが解析し、臓器の自動的な特定や過去と現在の画像を比較した骨の位置合わせなどを行う。

 「放射線科医の労働時間や作業量は増え続けている」と富士フイルムのメディカルシステム事業部ITソリューション部の成行書史マネージャーは指摘する。放射線科医の仕事の一つはCT画像から病変を見つける読影だ。この10年間で放射線科医の数は約40%増加したが、CT検査数も医師の増加率を上回る勢いで増え続けている。医療機器の高性能化も処理する情報量の増加に拍車をかけている。

 そこで同社は医療用画像管理システム(PACS)「シナプス5」上で動作するAIプラットフォームのシナプス・サイ・ビューワを開発し発売した。院内の医療用画像を集約・管理するPACSの国内シェア1位の強みを生かし、自社製のAIと連携。将来的には他社製のAIも使用できるプラットフォームにする。

 同システムは画像を読影する際の見落としを防ぎ、画像を見やすくする可視化の機能を備える。今後はAIの解析結果を医師が積極的に活用するコンピューター支援診断(CAD)やリポートの自動作成などを目標に開発を進める。

 同システムは可視化のための複数の機能を備える。その一つが画像から臓器を特定し抽出する機能だ。「肺の病変を見つけたいなら肺そのものを認識できなければならない。画像から特定の臓器を抜き出す機能は病変部を示すために活用できる」(成行マネージャー)。形状に個人差がある臓器も抽出でき、医師が病変を示す際に引用する「骨番号」を自動的に付与することもできる。

 過去に撮影したCT画像を現在のものと重ね合わせ、骨の構造が時間経過に従ってどのように変化したかを示すのが「骨経時サブストラクション機能」だ。例えばがんの骨転移を見つける際に役立つ。骨の硬さの変化を画像から見つけ出しがんの発見に寄与する。

 CT検査は一般的に人体を輪切りにした断層画像を撮影する。厚さ5ミリメートル程度の断層画像から1ミリメートル程度の画像を仮想的に生成するのが「バーチャル・シン・スライス」機能だ。厚みの薄い画像から3次元画像を再構築することで視認性を高める。実際に撮影数を増やせばX線による被ばく量も増えてしまうため仮想的に画像を生成できるメリットは大きい。

 同社はPACSやX線画像診断装置でノウハウを蓄積している。CTのデータから鮮明な画像を得る技術が深層学習に利用する教師データの質・量を担保する。AIが医師を助ける有能な助手となり、作業負担を軽減することを目指している。

日刊工業新聞2019年8月19日(トピックス)

  

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