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糖尿病に欠かせない眼球検査、先端カメラとAIが専門医不足を救う

トプコンの次元眼底像撮影装置、早期発見に貢献
糖尿病に欠かせない眼球検査、先端カメラとAIが専門医不足を救う

フルオートで光干渉断層計画像を撮影

 糖尿病が引き起こす合併症のうち、目が徐々に見えなくなっていく眼病が糖尿病網膜症だ。手遅れになるのを防ぐには早期発見が欠かせない。トプコンの開発した3次元眼底像撮影装置「3D OCT―1 Maestro」と無散瞳眼底カメラ「TRC―NW400」は眼球を鮮明な画像で撮影、異常を発見する。今後は人工知能(AI)と画像を組み合わせた選別検査も予定。非専門医でも眼球の異常を検査でき、早期の発見に貢献する。

 国内で通院中の糖尿病患者は328万人以上、その30%で糖尿病網膜症の可能性があるとされる。糖尿病網膜症は早期の治療で失明を回避できるが、眼科医は世界的に不足しているのが現状だ。

 そこで米IDxは非専門医でも糖尿病網膜症の検査ができる装置を開発。患者の眼底画像を自動で撮影し、得られた画像データをクラウド上の人工知能(AI)で解析する。眼病のリスクが高い場合は眼科を受診するよう勧めるリポートを自動で作成する。この検査で使用するのがトプコンの眼底カメラ「TRC―NW400(以下NW―400)」だ。

 NW―400はフルオートの撮影機能を備え、簡単なタッチパネルの操作だけで鮮明な眼底画像を撮影できる。専門医でなくても4時間程度の訓練を受けたオペレーターであれば操作でき、検査が可能なのが特徴だ。米国以外でも選別検査に同製品を使用している。中国でもトプコンの機器が活躍している。

 トプコンのアイケア製品はNW―400だけではない。「3D OCT―1 Maestro(以下マエストロ)」は眼底画像だけでなく光干渉断層計(OCT)画像を撮影できる。これは近赤外線で網膜の断層面を撮影するもので、眼底画像ではわかりにくい眼球の奥の立体的な変化を確認できる。

 マエストロは緑内障の検査で活躍している。緑内障は兆候がわかりにくいためOCT画像が診断に欠かせない。NW―400と同様、フルオートで安定したクオリティーの画像を撮影でき、リポートもワンクリックで表示可能だ。

 「OCT画像は眼底画像より情報量が多く、ニーズが高まっている。マエストロは二つのカメラで眼球を立体的に撮影することで数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のアライメントを可能にしている」と同社アイケア事業本部アイケア事業開発部の秋葉正博主査は話している。

 トプコンの両製品は医療現場の人手不足を自動化で補う。特別な技能者を必要とせず、装置がフルオートで撮影して「目の異常を検査できる機会が増える。

 健康診断での活用や、ドラッグストア・眼鏡販売店などに設置することで異常を早期発見し、眼科医へのバトンタッチをスムーズに行うことができるだろう」(秋葉主査)と見通しを語る。糖尿病患者の多い米国のほか、患者数が今後増える中国やインドも市場と見込み販売を拡大する。

 「目は心の窓」というが心だけでなく体の健康も反映する。血管や神経を直接観察できるため、生活習慣病や循環器の異常など全身の疾患の検出に役立つ。街角の目の検査で手軽に病気を見つけられる日も近い。
中国でも眼底画像検査にTRC―NW―400を使用
日刊工業新聞2019年8月12日

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