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AIが血液から卵巣がんを90%以上の確率で判別

理研が開発、手術前診断に
 理化学研究所の川上英良ユニットリーダーらは、人工知能(AI)を利用し卵巣がんの血液検査データからがんと良性腫瘍を精度良く判別する手法を開発した。人間の学習能力をコンピューターで実現する「機械学習」を使い、従来の統計的手法と比べ5・7ポイント増の92・4%に精度を向上させた。患者の体質や病状に合わせた個別化医療に向け、がんの手術前診断への応用が期待できる。

 見つかった手術後不良の早期がん患者に検診を促し、検証研究を実施したい考え。

 東京慈恵会医科大学産婦人科で、2010―17年に治療された334人の卵巣がん患者と101人の良性卵巣腫瘍患者を対象に血液検査を実施。卵巣がんの目印(マーカー)分子となる「CA125」や「CA19―9」などの手術前血液検査データ32項目と診断時の年齢から、がんの進行具合や組織の状態の判断に成功した。機械学習の一種「ランダムフォレスト法」を用いた。腫瘍の良性と悪性の判別も可能にした。

 卵巣がんの治療法は腫瘍切除手術の前後に抗がん剤の投与を行うことが一般的。抗がん剤の効果はがんの進行具合や組織の状態で異なる。患者ごとに効果的な治療法を選ぶため、手術前に治療戦略を立てることが求められる。
日刊工業新聞2019年5月15日(科学技術・大学)

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