ピストンリングメーカーはEV化の波に生き残れるか

非エンジン開拓、異業種参入も

 大手ピストンリングメーカーが非エンジン部品事業の拡大を目指している。エンジンを搭載する自動車のピークアウトを見据え、エンジンの主力部品であるピストンリングに依存した事業構造からの脱却を急ぐ。ピストンリング以外の部品や電動化対応だけでなく異業種への参入も視野に入れる。ただ、エンジン搭載車もしばらくは需要増が予想され、既存事業を固めつつ次世代に向けた新規事業を育成する。

 「最近の予測では少し前倒しで、2030年頃になりそうだ」。TPRの岸雅伸社長はエンジン搭載車のピークアウトの時期をこう分析する。世界で環境規制が厳格化され、電動化が進む。日本ピストンリングやリケンもおおむね30年頃をピークアウト時期と捉えている。

 ピストンリングを主力とするメーカーにとってエンジン市場の衰退は経営の屋台骨を揺るがす。将来の事業基盤を固めるため、ピストンリング以外の部品事業の確立や、電動化への対応が活発になってきた。

 日本ピストンリングは金属粉末射出成形(MIM)製品「メタモールド」の事業を14年に住友金属鉱山から取得。金属粉末と結合剤(バインダー)を焼結するなどし、複雑な形状の製品の大量生産を可能とする技術だ。電動パワーステアリング向けボールネジ部品などとして需要が広がりつつある。

 リケンは次世代自動車など向けにギガヘルツ帯の高い電磁波(ノイズ)に対して抑制効果を示す「ノイズ抑制シート」を開発。サンプルを提供中だ。

 大学との連携で新分野への進出を図る動きもある。TPRは蓄電池材料などとして期待されるナノメートルサイズ(ナノは10億分の1)の多孔質素材を東北大学金属材料研究所と共同開発した。材料から特定成分を抜き出す製法で独自の多孔質構造を生み出す点が特徴で、蓄電池の長寿命化につながるとみている。

 自動車関連だけでなく、異業種でも自動車部品で培った加工技術などが生かせるとみている。日本ピストンリングは、神経変性疾患「パーキンソン病」の治療に使用する脳内の刺激装置の部品を開発した。

 一方で、世界的にエンジン搭載車は「まだまだ成長市場にある」(山本彰日本ピストンリング社長)とみて、主力であるピストンリングの生産設備の増強や技術開発などを進める動きもある。伊藤薫リケン社長は今後も「既存製品への投資を続けつつ、新商品の開発をしなければならない」と語る。既存事業で生み出した利益を新規事業の育成に投じる。各社は既存と新規でバランスの取れた事業構造を重視している。
(文=山岸渉)

日刊工業新聞2019年8月2日

  

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