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「タワー・オブ・テラー」の恐怖と楽しさを支えるおもてなし 

19世紀末の米ニューヨーク。「ホテルハイタワー」の最上階でエレべーターに乗り込んだオーナーが失踪する怪事件が起きた。それから13年後の1912年。オーナー失踪後、閉鎖されていたホテルで開かれた見学ツアーの参加者は業務用エレベーターで最上階に向かう。そこにはどんな恐怖が待ち構えているかも知らずに…。

 これは史実ではない。テーマパーク好きの方はご存じだろう。東京ディズニーシー(TDS)開園5周年目の2006年9月4日にに26番目のアトラクションとしてお目見えした垂直落下型アトラクション「タワー・オブ・テラー」の設定だ。

 開園直後からTDSを運営するオリエンタルランドと米ディズニー社が導入を検討してきた肝いりの施設で、米フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートに1994年にオープンした「トワイライトゾーン・タワー・オブ・テラー」を参考に造られた。

 投資額は210億円で東京ディズニーランドを含めて東京ディズニーリゾートでは最大。現在でも人気アトラクションのひとつになっている。

 絶叫系の乗り物ではないが、初めて体験した人は放心状態になる人も少なくない。遊園地によくある垂直落下型の乗り物といえばそれまでだが、ゲストはエレベーターに乗り込む前に、ホテル内を見学し、オーナーの謎の失踪の物語をナレーションですり込まれることで恐怖は倍増する。

 エレベーターに乗ると、真っ暗になり、猛スピードで上昇。急に止まったかと思うと視界が一瞬開け、TDS全体や近くの葛西臨海公園の観覧車まで見えたかと思うや、「ぎゃー」という観客の悲鳴とともに急降下する。体が浮くという体験はこういうことをいうのだろう。

 暗闇が恐怖を増幅させている感もあるが、エレベーターの速度も落差も決して小さくない。地上59メートル、最大落差は約38メートル、最高速度は時速約50キロに上る。世界最速のエレベーターが時速約75キロであることを考えると、いささか劣るがアトラクションでは異例の速さといえよう。

 「タワー・オブ・テラー」はスリリングさと同時に最上階で眼前に一瞬広がる景色が人気だが、実はエレベーターの乗客が頂上で見える景色はひとつではない。長時間待ちが当たり前のアトラクションであるために、搭乗口がA、B、Cと3つ用意されており、ゲストはランダムに案内される(乗り場は1階に3箇所、2階にも3箇所の計6箇所)。

 TDS好きの間ではA、B、Cでは落下速度が違うなどの議論もあるようだが明確な根拠はない。ただ、エレベーターの設置場所が異なるため、頂上で見える景色が少し異なるというわけだ。

 自ら搭乗口を選べないだけに、TDSファンの中ではいかに一日で異なる搭乗口に乗れるかを競う楽しみもあるが、いかんせん人気が高いアトラクションが故に、乗れる回数も限られる。TDSに行ったら、タワーオブテラーのエレベーターにいかに効率よく乗るかが愛好家の腕の見せ所にもなっている。



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