終わりなき「顧客満足」、ディズニーシー拡張は起爆剤になるか
オリエンタルランド、テーマパーク大競争時代に挑む
4月で開園35周年を迎えた東京ディズニーリゾート(TDR)。1983年の東京ディズニーランド(TDL)開園以来、新型アトラクションの導入やイベントの刷新をほぼ毎年続け、累計7億人を超える来園者に夢と感動を与えてきた。一方で国内外でテーマパークの競争が激しくなっている。さらに来園者の混雑などで顧客満足度も低下傾向にある。今回発表した東京ディズニーシー(TDS)の大規模拡張計画は、ハード・ソフトの両面を進化させる起爆剤になるか。
「開園以来最大規模の拡張となる。インパクトのある投資を連続して行い、パークの魅力を高めたい。世界のどこにもないテーマパークへと進化させる」ー。TDRを運営するオリエンタルランド(OLC)の加賀見俊夫会長の口調にも熱がこもる。
2022年度までに過去最大の約2500億円を投じ、TDSの西側にある駐車場の跡地を転用し、「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」の三つのディズニー映画の世界を再現したエリアを設ける。
開発総面積は約14万平方メートルで、同エリア内には四つのアトラクションやTDRで5番目となる最上位クラスのホテルなどを新設する。拡張により年500億円規模の売上高増加を見込む。
アナ雪のアトラクションは15年に開設計画を発表、用地不足や米ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーとの交渉が長引き香港やパリのディズニーリゾートで先に導入が決まった経緯がある。
TDRは他国と違い米ディズニーの直営ではない。オリエンタルランドがライセンス契約によって自前で所有、運営している。これまでも有力アトラクションを誘致してきたが、香港などに後れを取った感は否めない。
TDRの入園者数は料金引き上げの影響で15―16年度は2年連続で減少したが、17年度は増加に転じた。OLCは、35周年イベントの実施により、18年度の入園者数を17年度より90万人多い3100万人と見込む。「過去最高(14年度の3137万人)には届かないが、かなりレベルの高い水準」(宮内良一OLC執行役員)となる。
設備の新設に加え、来園者の利便性を高めるサービスの充実にも力を入れる。今年、開園以来初めて年間パスポートを値下げ、混雑する日に年パスも使えない日も設定した。今夏に提供するスマートフォン向け公式アプリには、アトラクションの待ち時間をリアルタイムで表示する機能などを搭載し、来園者が快適に遊べる仕組みを取り入れる。入園者の満足度が下がれば、約9割を占めるリピーターも減る恐れがあるからだ。
通年で展開する35周年記念イベント。目玉の一つがTDLの新しい昼のパレード「ドリーミング・アップ!」だ。ディズニーキャラクターがフロート(山車)に乗って華やかにパレードし、来園者を夢の世界にいざなう。フロートのデザインや出演者の衣装を細部までこだわって作り込み、何度見ても楽しめるように工夫している。
開設後、時間がたったアトラクションはどうしても少しずつ飽きられる。TDLの人気アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」を開園以来初めて刷新しオープンした。「小さな世界」の音楽に合わせ、世界各国の子どもたちをイメージした人形が歌と踊りを披露する。今回は約40体のディズニーキャラクターが新たに加わって一層華やかになり、大きな幸福感を味わえるアトラクションに進化した。
加賀見会長は「これまでとは別次元だと評価されるような、新しい体験価値の創造への準備が進んでいる」と話す。19年はTDSに大型アトラクション「ソアリン」(仮称)を導入、20年はTDLにディズニー映画「美女と野獣」がテーマの新規エリアを開設する。
今後、OLCが狙うのは、大規模投資を継続しながら限られた敷地の中で顧客の体験価値を上げ、集客の拡大と物販・飲食、宿泊も含めた顧客単価をアップさせること。現在、連結売上高は17年度実績で4800億円弱。TDSの拡張によって5000億円台半ばから後半に到達する見通しだ。
しかし香港以外にも16年に中国・上海にディズニーランドが開業し大規模な拡張工事を進めており、目新しさに欠ければ中国人の訪日客も流出してしまう。これまで第3のテーマパークの新設も取りざたされ、一時は「空」をテーマとしたパークという憶測もあった。加賀見会長は「第3のテーマパークという意見もあったことは事実。ただ、新しいパークを造るより満足感が低下しつつある既存パークを充実させたほうがいいという結論になった」と話す。「空」のパークは技術的に難しいという理由もある。
「ディズニーランドは永遠に完成しない」(ウォルト・ディズニー)ー。新鮮さと快適さを兼ね備えたテーマパークを目指し、ハード・ソフトの両面で進化への挑戦は続く。
「開園以来最大規模の拡張となる。インパクトのある投資を連続して行い、パークの魅力を高めたい。世界のどこにもないテーマパークへと進化させる」ー。TDRを運営するオリエンタルランド(OLC)の加賀見俊夫会長の口調にも熱がこもる。
2022年度までに過去最大の約2500億円を投じ、TDSの西側にある駐車場の跡地を転用し、「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」「ピーター・パン」の三つのディズニー映画の世界を再現したエリアを設ける。
開発総面積は約14万平方メートルで、同エリア内には四つのアトラクションやTDRで5番目となる最上位クラスのホテルなどを新設する。拡張により年500億円規模の売上高増加を見込む。
アナ雪のアトラクションは15年に開設計画を発表、用地不足や米ザ・ウォルト・ディズニー・カンパニーとの交渉が長引き香港やパリのディズニーリゾートで先に導入が決まった経緯がある。
TDRは他国と違い米ディズニーの直営ではない。オリエンタルランドがライセンス契約によって自前で所有、運営している。これまでも有力アトラクションを誘致してきたが、香港などに後れを取った感は否めない。
TDRの入園者数は料金引き上げの影響で15―16年度は2年連続で減少したが、17年度は増加に転じた。OLCは、35周年イベントの実施により、18年度の入園者数を17年度より90万人多い3100万人と見込む。「過去最高(14年度の3137万人)には届かないが、かなりレベルの高い水準」(宮内良一OLC執行役員)となる。
設備の新設に加え、来園者の利便性を高めるサービスの充実にも力を入れる。今年、開園以来初めて年間パスポートを値下げ、混雑する日に年パスも使えない日も設定した。今夏に提供するスマートフォン向け公式アプリには、アトラクションの待ち時間をリアルタイムで表示する機能などを搭載し、来園者が快適に遊べる仕組みを取り入れる。入園者の満足度が下がれば、約9割を占めるリピーターも減る恐れがあるからだ。
通年で展開する35周年記念イベント。目玉の一つがTDLの新しい昼のパレード「ドリーミング・アップ!」だ。ディズニーキャラクターがフロート(山車)に乗って華やかにパレードし、来園者を夢の世界にいざなう。フロートのデザインや出演者の衣装を細部までこだわって作り込み、何度見ても楽しめるように工夫している。
開設後、時間がたったアトラクションはどうしても少しずつ飽きられる。TDLの人気アトラクション「イッツ・ア・スモールワールド」を開園以来初めて刷新しオープンした。「小さな世界」の音楽に合わせ、世界各国の子どもたちをイメージした人形が歌と踊りを披露する。今回は約40体のディズニーキャラクターが新たに加わって一層華やかになり、大きな幸福感を味わえるアトラクションに進化した。
加賀見会長は「これまでとは別次元だと評価されるような、新しい体験価値の創造への準備が進んでいる」と話す。19年はTDSに大型アトラクション「ソアリン」(仮称)を導入、20年はTDLにディズニー映画「美女と野獣」がテーマの新規エリアを開設する。
今後、OLCが狙うのは、大規模投資を継続しながら限られた敷地の中で顧客の体験価値を上げ、集客の拡大と物販・飲食、宿泊も含めた顧客単価をアップさせること。現在、連結売上高は17年度実績で4800億円弱。TDSの拡張によって5000億円台半ばから後半に到達する見通しだ。
しかし香港以外にも16年に中国・上海にディズニーランドが開業し大規模な拡張工事を進めており、目新しさに欠ければ中国人の訪日客も流出してしまう。これまで第3のテーマパークの新設も取りざたされ、一時は「空」をテーマとしたパークという憶測もあった。加賀見会長は「第3のテーマパークという意見もあったことは事実。ただ、新しいパークを造るより満足感が低下しつつある既存パークを充実させたほうがいいという結論になった」と話す。「空」のパークは技術的に難しいという理由もある。
「ディズニーランドは永遠に完成しない」(ウォルト・ディズニー)ー。新鮮さと快適さを兼ね備えたテーマパークを目指し、ハード・ソフトの両面で進化への挑戦は続く。
日刊工業新聞2018年6月15日の記事に加筆