「TDL」がオンリーワンであり続ける、ポートフォリオ経営

オリエンタルランド代表取締役会長兼CEO・加賀見俊夫

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 2018年、訪日外国人旅行者数が初めて3000万人を突破した。東京ディズニーリゾート(TDR)の年間入園者数と同じ規模だ。インバウンドの増加に比例して、TDRの入園者数に占める外国人比率は約10%となり、300万人を上回った。

 2020年東京五輪・パラリンピックなどを控え、今後も訪日外国人旅行者は増え、インフラ整備も進む。それに甘んじることなく、テーマパーク経営者として選ばれる施設になるための努力を重ねていく。

 私は日本生産性本部で評議員を務め、経営品質について学んできた。テーマパークの事業戦略の根幹はリピーターの獲得。経営品質を図る指標の一つとして再来園意向率を重視している。これを高める秘訣(ひけつ)がアトラクションポートフォリオだ。

 「トイ・ストーリー・マニア!」などの集客コンテンツ、「ミッキーのフィルハーマジック」をはじめとする人気コンテンツ、「空飛ぶダンボ」のような基盤コンテンツ。これをバランス良く配置している。収容力が小さく体験人数が限られる基盤コンテンツも世界観醸成に一役買っており、TDRの普遍的価値を創造している。

日本は少子高齢化が進み、1人暮らしの単独世帯も増える。時代の変化に対応し、これからのテーマパークは、今まで以上に祖父母世代が息子夫婦、孫たちと3世代で楽しめる機会を提供することが成長のカギ。例えば22年度開業の東京ディズニーシー(TDS)の新テーマポートには世代を超えて共感を得ている「アナと雪の女王」を導入する。

 最適なアトラクションポートフォリオを形成し、はやり廃りのない永続的な価値を創造することで生涯を通じたリピーターを創出できる。加えてパレードを座って観覧できる場所やお年寄りがゆっくりできるレストランなど、非日常を維持しつつもバリアフリーの視点を取り入れる。新鮮さと快適さの両立だ。

 ハードだけでは成功しない。キャストと呼ぶ準社員の力が欠かせない。従業員満足度が高まってこそ、顧客満足度向上につながる。異なる部署のキャストが休憩室や食堂で顔を合わせ、雑談の中で失敗や成功事例を共有している。実はこれが顧客満足度にプラス効果をもたらしている。

 TDRは上海、フロリダなど中国や米国のディズニーランドと比較して規模で劣るがサービス面では負けないと思っている。今のところアジアのディズニーランドとは競争ではなく相乗効果が生まれている。米国のお客さまも増えている。海外市場の動向も把握しながら、魅力を高め、オンリーワンのTDRであり続けたい。

キャストのプロ意識


 TDRでは主に約2万人のキャスト(準社員)がオペレーションを担っている。ゲスト(顧客)サービスにマニュアルを設けず、ディズニー・フィロソフィー(哲学)や行動指針「SCSE(安全、礼儀、ショー、効率)」など、考え方を共有・共感してもらうことで、自ら考えて行動できるキャストを育成している。人財というソフトパワーがTDRの魅力を一層引き立てている。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災。多くのゲストがTDRに滞在していた。公共交通機関がストップし、約2万人のゲストが帰宅できず、パーク内で一夜を明かすことになった。

 外は4度C。現場のキャストの判断で、温かい飲み物や毛布を配り、普段は決してゲストに見せることのない段ボールを敷くなど、指示やマニュアルを超えて対応してくれた。理屈でなく、臨機応変を心がけてもらっており、プロ意識も高い。

 リスクばかりを考えると現場に権限を委譲できない。自分たちがTDRを経営していると意識付けさせることが質の高いサービスに結びつく。ゲストの喜ぶ顔が自分の幸せにつながるという価値観やお互いを認め合う文化など、長年TDRが育んできた環境こそオンリーワンだと思っている。

 教育は「安心」「楽しい」「働きがい」の3本柱に人事制度を構築し、入社後の経過に応じて「おもてなし」や「後輩へのアドバイス」を学ぶ研修プログラムなども設けている。キャリア支援も充実させており、2018年10月からは「OLCキャリアカレッジ」をスタートさせた。自分自身の将来を目指す姿を明確に意識することで、より安心してモチベーション高く働き続けてもらいたと思っている。

 年間3000万人を超えるゲストの安全を守らねばならない。企業の危機管理意識が問われる時代であり、安全には細心の注意を払っている。

 例えば地震発生時などは緊急対応センター「ECC」が速やかに立ち上がり、経営トップまで情報が常時伝達され迅速に意思決定できるような仕組みを整えている。大小含めて年100回くらいの防災訓練も重ねており、常にパークとゲストの安全を守っている。

 平成の30年が終わり、次の時代を迎える。TDRの伸びる余地はまだまだ大きい。今後は老朽施設の代替も同時並行で進めねばならない。安全対策は先行投資であり、絶対に手を抜かないで進めたい。
加賀見俊夫氏

日刊工業新聞2019年3月28/29日

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