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半数が時短営業を希望したファミマ加盟店、本部は何を思う?

「一番大事なのは加盟店が収益を上げること」(沢田社長)
 ファミリーマートがフランチャイズ(FC)加盟店を対象にした24時間営業に関する調査結果によると、回答した1万4572店のうち時短営業への変更を「検討したい」が48・3%を占めた。約半数が希望したことに対し、沢田貴司社長は「想定より高い数字。一番大事なのは加盟店が収益を上げること。10月中旬からは最大700店舗で時短実験を始める」とした。

 加盟店が時短営業を検討したい理由としては「深夜帯の客数が少なく、収支を改善したい」が47・6%、「人手不足のため」が46・4%と二つで90%を超えた。

 6月から東京都と長崎県、秋田県の計24店舗で実施している時短営業の実験結果では、前年同月比で売上高が拡大した店舗があった一方で、人件費が下がったものの利益が減少した店舗もあった。実験期間が1カ月と短く、個店の立地条件や客数も異なるため、さらに検証を進める。700店での実験結果を見極め、早ければ12月にも時短営業の体制を整える。

 また、9月には加盟店からの意見に早急に対応するための組織を立ち上げ、相談を受ける体制を強化する。

 同時に公表したフードロス対策については、9月からレジ横の焼き鳥や総菜といったカウンター商材を18時から22時の間は値引きする。スマホ決済の「ファミペイ」に還元する予定。6月に直営店で20時以降、おにぎりと弁当の値引き販売をする実験を始めたが、検証中のものが多く削減率などは公表していない。

日刊工業新聞2019年7月29日



沢田貴司社長インタビュー


 ―24時間営業問題を発端にコンビニ業界に逆風が吹いています。
 「24時間問題だけでなく、コンビニが今日置かれている状況を正しく把握する必要がある。百貨店などが隆盛後に破綻や統合と変遷してきた。6万店を目前にコンビニも同じ道をたどっている。他の業種の小売業は直営店だったから整理統合できた。コンビニの整理は加盟店に傷がつく。一方で、日本の小売業は大転換期を迎えており、本当に変われと言われていると思う」

 ―まず何から着手しますか。
 「大事なのは、加盟店が収益を上げられるようにすること。個店によって抱える課題は異なる。それぞれの個店に向き合い課題を着実に解決する」

 ―加盟店を指導するスーパーバイザー(SV)や本部社員にも変革を求めています。
 「私自身が加盟店オーナーやスタッフたち200人以上とLINE(ライン)でつながっている。SVを経由せず、直接、苦情や要望を伝えてくる方も多い。この直訴を、組織を無視した越権行為と言ってしまうのは、あるべき論。あるべきことが機能していないから、加盟店から悲鳴が届くわけで、その声を聞いて解決することこそが全て。社内経由、直訴と両方あって良い」

 「契約などルールを重視しすぎるとルールに頼り、考えなくなる。社員には『そのルールは正しいのか疑え。安住することなく、ぶっ壊せ』と言っている。私が加盟店でオーナーの話を聞いている周りに傍聴席を作り、そこにSVら責任者を置く会を、毎月実施する。オーナーから問題提起されたのに責任者が動けていない場合は、注意もするし、その場で対応させている。今、本部が一番ばかになり、ぼけている。現場は待ったなしだ。私自身も安住せず、常に意識して動いている」

 ―6月に始めた時短営業実験の状況は。
 「想像以上に悪い数字が出ている。夜間営業をやめると顧客は離れ、競合店に取られる結果が露骨に出ている。納品時間の変更は逆にスタッフが集まらず、コストがアップした店もある。十分に検証して仕組みを作っていく」

 ―完全無人店舗を目指しますか。
 「トライしたい。横浜市のパナソニックとの実験店もそうだし、ほかのメーカーともロボットを使った販売などで共同研究している」

【記者の目】
 社長のラインに届いた加盟店オーナーからの切実な要望を見た。オーナーの意をくみ取って、即、指示が飛ぶ。指示にのっとって動く社員に緊張が走る。もう良い方向に変わるしかないという、真剣さの表れだろう。本部の変革で、多くの加盟店が納得してコンビニ運営できるようになれば、ファミリーマートの価値は一段上がる。
(文・丸山美和)
沢田社長

日刊工業新聞2019年7月3日

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