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“ファーウェイ・ショック”直撃、半導体各社の戦略見直し相次ぐ

マイクロンは投資延期、WDは取引中止
 世界の半導体大手は“華為技術(ファーウェイ)・ショック”で事業戦略の見直しを迫られている。米マイクロン・テクノロジーは広島工場(広島県東広島市)への投資計画を見直し、米ウエスタンデジタル(WD)もファーウェイとの取引を中止した。米国政府による中国通信機器最大手への輸出禁止措置は、スマートフォンや通信装置に使う半導体の需要も減少させ、各社のビジネスを大きく揺さぶっている。

 マイクロンは広島工場で着工済みのDRAM製造棟「F棟」について、増設工事の一部を当初計画より7カ月遅らせる方向。製造フロアは下層階と上層階の2段構造で、従来はすべて2020年7月の完工を予定していた。そのうち上層階の完成を21年2月に延期する。この投資の急ブレーキはファーウェイとの取引中止に起因するとみられる。

 同工場はマイクロンにとって最先端DRAMの生産拠点。今月11日に同工場で新製造棟「B棟」の完成披露式典を開き、クリーンルームの面積を従来比10%拡大したばかり。今後数年でさらに数十億ドルの投資を表明しているが、米中貿易摩擦の影響で計画の微調整は避けられそうにない。

 WDはファーウェイに対して、主にNAND型フラッシュメモリーを販売してきた。ただ、トランプ米政権の禁輸措置を受け、米国企業として法令順守を優先して一時的な取引中止を決断した。

 WDとフラッシュメモリー生産で協業する東芝メモリホールディングスもファーウェイへの供給減を補う拡販戦略を急ぐ。ファーウェイとの取引は続けるが、スマートフォン世界首位の韓国・サムスン電子のほかOPPO(オッポ)やvivo(ビボ)など中国勢への営業攻勢を強める。

 米商務省は5月に安全保障上の懸念のある外国企業の禁輸対象リストにファーウェイを追加した。米国のインテルやクアルコム、ブロードコムなど他の半導体大手も取引停止に踏み切ったという。米中貿易摩擦の激化は半導体各社の事業戦略を大きく左右している。

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