中国政府と連携も…絶えない「軸受」の偽装品

違法企業との“モグラたたき”が続く

 産業機械や自動車の要素部品として欠かせない軸受。補修用などのアフターパーツでは偽造品が絶えず、世界100カ国・地域以上で見つかっている。偽造品は機械の故障だけでなく労働災害に発展する可能性もあり、軸受業界は政府機関と連携した摘発にも乗り出している。ただ中国を中心とした構造的な問題が対策を難しくしている面があり、違法企業との“モグラたたき”が続く状況に、軸受けメーカーは苦悶(くもん)の表情を浮かべる。(文=西沢亮)

 「世界の軸受の偽造品のほぼ100%が中国でつくられていると言われている」。日本精工産業機械事業本部グローバルアフターマーケット部技術担当の内田光一氏は現状をこう指摘する。

 中国の軸受市場では現地メーカーが自ら生産して販売する自社ブランドと、海外メーカーなどからOEM(相手先ブランド)で受託する“ノーブランド”品が存在する。

 違法企業はノーブランド品を巧みに調達し、梱包(こんぽう)を正規品に偽造して販売。中国国外に出荷する場合、軸受と梱包資材を別々に調達して需要地で完成させるなど手口も巧妙だ。内田氏は「軸受メーカーが受注段階で違法企業を見分けるのは難しい」と指摘する。

 工場などのユーザーは販売代理店などを通じて軸受を調達する。補修部品の納期が長期化した場合に従来と異なるルートから調達し、偽造品が紛れ込む場合があるという。

 これまで偽造品は小型の軸受が中心だったが、利幅が大きい大型や特注品にも拡大。特注品などでは従来ルートで調達すると1年以上かかる場合もあり、「違法企業はあえてこうした製品を狙い、利益を最大化する傾向にある」(内田氏)。

中国政府と連携、民事対応も


 軸受業界も手をこまねいているわけではない。日米欧の軸受メーカーで構成する世界ベアリング協会(WBA)は中国政府などと連携。公安当局と違法企業の摘発に乗り出すほか、刑事だけでなく民事でも対応。違法企業の経営に打撃を与える額の賠償金を請求するなど対策を強化する。ただこうした対応にもかかわらず、大手軸受メーカーでは「毎年億円単位の被害が発生している」(内田氏)。

 日本精工でも毎年1万個を超える偽造品が発覚する。梱包に印字する文字や模様に特殊な仕掛けを施して偽造品と区別するなど対策を強化。このほどIoT(モノのインターネット)を活用し、ユーザーがスマートフォンを使い正規品であることを簡単に確認できる仕組みも導入した。

 しかしある違法企業を摘発しても、別の偽造品が生まれモグラたたきのような状況が20年以上続く。軸受は機械や車に幅広く使われ、その不具合は工場の操業だけでなく、日常生活にも影響を与える可能性がある。内田氏は「軸受メーカーが対策を諦めれば新たな偽造品市場が形成され、被害が拡大する」と指摘。偽造品の撲滅に向け、メーカーの奮闘は続く。

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日刊工業新聞2019年7月23日

  

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