仕事・給与を自分で決める「ティール組織」に移行した企業が得たモノ

フリープラスが組織体制移行

 フリープラス(大阪市北区、須田健太郎社長、06・7638・6332)は、原則全ての階級を廃止し、給与などほぼ全ての決定権限を社員自身に委ねる「ティール(進化型)組織=用語参照」と呼ばれる体制に移行した。会社法に定められた最低限の制約を除く全ての決裁権限を社員自身が持つ。社員の主体性を高め、意思決定を早めるのがこの組織形態の特徴。100人超の社員を抱える企業がティール組織への移行を表明した例は全国的にも珍しい。

 フリープラスは訪日外国人観光客を対象に旅行手配事業やホテル業を手がける。今回の組織移行により、会社法に定められた「取締役」などの役職を除く原則全ての階級を廃止した。社員給与や事業計画の策定、出張や採用といったあらゆる決定を社員自身で下すことが認められている。グループ間の伝達役である「リードリンク(リーダー的存在)」は存在するものの、他人への強制力はない。

 給与は会社の業績や他社の基準額などの指標をもとに、四半期ごとに自主決定する。給与の予定額は社内で公表され、他者から意見を受けた上で最終決定する。例えば月給を1億円などの飛び抜けた金額に設定することも不可能ではないが、各社員は会社の収益に及ぼす影響なども考慮するため一定の歯止めがかかる。

 須田社長自身は匿名社員からの意見を入れ、月給をこれまでより大幅に低い44万円に設定したという。

 責任の所在が曖昧になったり、統制が取れなくなるなどの懸念に対しては、決定前に社内関係者に相談するなど一定のルールを設けた。ただ必ずしも意見を全て反映しなくてよく、あくまで社員自身の判断が尊重される。

 課題も多いものの、新事業へのアイデアが出やすくなるなど「(組織が)はるかに良くなってきた」(須田社長)と手応えを感じている。家族の都合で海外に移住せざるを得なかった社員が、現制度の活用により、会社を辞めずに現地で新たなビジネスを立ち上げた事例もあるという。

 須田社長は「(社員に権限を委譲する)信頼と覚悟さえあれば組織移行は可能だ」と話す。そのため、「採用は極めて重要」(同)だ。採用は最終的には現場が決定するものの、全ての面接には採用経験の多い須田社長が同席し意見する。面接の機会を多く持ち、組織についての説明に時間をかけるという。

 同社はこれまでも役職者を社内公募するなど柔軟な組織運営を推進。新組織への移行は1年の準備期間を設け、社内で5回の説明会を開くなど慎重に取り組んだ。(大阪・大川藍)

【会社概要】
▽資本金=7億1502万円
▽売上高=42億円(2018年12月期)
▽従業員=351人(アルバイト236人を含む)
▽設立=07年(平19)6月

【用語】
ティール組織=ベルギー出身のフレデリック・ラルー氏が提唱した組織形態。経営者の意思決定で組織を運営するのでなく、社員が自己管理して目的を遂行する。取締役以外は階級がなく、原則全ての事業を所属員が自主決定する。(1)企業の明確な存在目的(2)社員の自主決定権限(3)社員が自己を偽らず能力を最大限発揮できる仕組み―の三つが同組織の要件。細かな規則で組織を統制するヒエラルキー型に対し、ティール型には厳密な決まり事がなく、柔軟に組織を運営できる。

日刊工業新聞2019年7月18日

  

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