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「5G」「楽天参入」「携帯料金」…。吉沢社長、ドコモは差別化できます?

吉沢和弘社長インタビュー
 携帯電話業界が今秋に大きな転換点を迎える。9月のラグビーワールドカップ(W杯)を機に第5世代通信(5G)のプレサービスが本格的に始まるほか、携帯電話の2年契約を途中で解約する違約金の上限を1000円にする新ルールの導入が予定されているからだ。10月には楽天の参入もある。NTTドコモの吉沢和弘社長に戦略を聞いた。

 ―ラグビーW杯でどのような5Gサービスを提供しますか。
 「12会場中、8会場に5Gエリアを構築し、5G対応スマートフォンを数百台用意する。(複数台のカメラ映像から自分が好きな映像を選べる)マルチアングルの映像を視聴できるようにするほか、ファウルの理由や試合データをリアルタイムで確認できるようにしたい。4Kカメラ4、5台で撮影した映像を切れ目がない超ワイド映像に合成し、ピッチ全体を一望できる映像を視聴できるライブビューイングも実施する」

 ―20年の商用化に向け5G対応コンテンツの充実が不可欠です。
 「ディズニーが持つ4ブランドの映像作品をスマホやテレビで見放題にできるサービスを始めた。この関係が武器となるだけに、映画館に負けない没入感が得られるサービスを検討したい。子会社化したNTTぷららが持つ映像制作、コンテンツ調達、映像配信基盤も武器になる。メガネ型端末や360度カメラなど5Gサービスに欠かせない周辺機器で、当社のスマホとの接続性能などを認定した製品の発売もあり得る」

 ―5G対応スマホをどのように普及させていきますか。
 「(周波数帯6ギガヘルツ未満の)サブ6と(28ギガヘルツ帯など高周波数帯の)ミリ波の両方に対応した端末の開発は、高周波数帯電波の直進性の強さなどの問題から難しい。まずはサブ6に対応した5Gスマホをできるだけ早く現状のフラッグシップ機種と同等の価格で提供していく」

 ―総務省が違約金上限1000円、通信契約を条件とする端末値引き上限2万円としました。
 「顧客が携帯事業者を乗り換える大きな要因はキャッシュバックや端末補助だったが、新ルールではそれができなくなる。新ルールが乗り換えを大きく促進するのかは様子を見る必要がある。(楽天は低料金を打ち出す見込みだが)携帯以外のサービスとの組み合わせで低料金にするとみている。楽天は通信設備の利用(ローミング)で提携するKDDIとの料金の兼ね合いをどうするのか。楽天が“身銭”を切って低料金を打ち出すのであれば対策を考えたい」

【記者の目】
 超高速大容量、超低遅延、同時多数接続が売りの5Gは、今までにないサービスの提供が見込める。それだけに5Gスマホをハブ(中核)にどのようなサービスを提供できるかが今後の携帯事業者の競争力となる。その指標となるのが自社ポイントサービス。1億以上の会員数を誇る楽天に約7000万のドコモのdポイントがどれだけ近づけるか注視したい。
(水嶋真人)
日刊工業新聞2019年7月12日

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