東京都市大の科研費獲得が3割増えた裏側 

教授職を公募に変え、研究分析ツールで評価するなどの策が効いている

 東京都市大学は文部科学省の科学研究費助成事業(科研費)の2019年度獲得が前年度比3割増になるなど、研究力向上で成果を挙げている。教授職を公募に変え、研究分析ツールで評価するなどの策が効いている。研究活動優先となる教員の選抜や、外部資金の間接経費引き上げ分を研究支援に回す取り組みも始めた。背景に「私立大学も国際化では研究力が重要だ」(三木千寿学長)という意識がある。(文=編集委員・山本佳世子)

 私立大学は研究より教育重視が多いが、三木学長は東京工業大学で副学長を務めた経験から、私大も外国大学との交流で世界大学ランキングが見られ、研究力が必要だとしてきた。

 同大は理工系以外の文系、学際系にも対応するため科研費に注目した。申請書には学長、副学長、研究支援のリサーチアドミニストレーター(URA)の3者が目を通す。科研費の獲得金額は19年度2億1600万円で、1教員当たり100万円の目標に近づいたという。また共同・受託研究費も合わせた外部資金総額は17、18年度連続で10億円超となった。

 理系は学術出版社エルゼビアの論文データベースに基づく研究分析ツール「サイバル」を活用する。従来は学内昇格だった教授ポストも、科研費やサイバルの状況で決める。

 現在、「研究教授」「研究准教授」を各学科1、2人で選定中だ。学内運営業務を抑え研究スペースを増やし、研究重視で活躍してもらう狙いだ。

 また受託研究費の間接経費引き上げ分を使った研究力向上策を若手教員・職員で議論。英語論文の添削料、引用度向上につながるオープンジャーナルの投稿料で活用し始めた。

<関連記事>
国立大が生き残っていくための「卓越」という選択


              

キーワード/間接経費の割合


Q 間接経費のおさらいを。

A 大学における研究費の内訳のうち「直接経費」は、装置購入や博士研究員雇用など研究そのものに関わるもの。「間接経費」は水光熱費や研究室器具、研究支援人材人件費など大学運営に関わるものだ。文科省の科研費では「間接経費は直接経費の3割」で設定している。

Q 内閣府は「特に研究型大学の国立大学は産学の共同研究費で、しっかり獲得を」と旗を振っている。

A この数値は上位の国立大学でも2割台が3大学程度にすぎないからだ。間接経費比率を3割に近づけ、大学の持ち出しという状況を変えようとしている。大学に対する企業の評価を高めながら、追加の経費を求めることになり工夫がいる。

Q 東京都市大学の場合は。

A 企業や自治体などに頼まれる受託研究費で、間接経費を10%から15%に引き上げた。増えた5%(18年度は800万円)分を学内の研究力強化策に当てている。外部機関がすべきことを請け負う受託研究なら大学も強気に出られ、私大も頑張れると思うよ。

日刊工業新聞2019年7月11日

山本 佳世子

山本 佳世子
07月12日
この記事のファシリテーター

私立大で、間接経費の引き上げという官民連携の方針を正しく捉えているところはそう多くない。科研費獲得増はかなりの大学でムーブメントになっているが、それとは違う切り口だ。それだけに、都市大が受託研究の間接経費で動いていると知って印象的だった。しかもその使い途を、中堅教職員のアイデアを生かした研究支援とする点が注目だ。トップの旗振りが厳しくとも、現場が「自分たちの意見も生かされている」と感じられることが、改革成功の重要な要因になるだろう。

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。