若手伸び悩み・論文減少…科学技術政策計画に課題噴出

「第5期科学技術基本計画」が折り返し

 2016年から5年間の科学技術政策を示す「第5期科学技術基本計画」が折り返し地点を迎えた。安倍晋三政権は国内総生産(GDP)600兆円を実現するため、科学技術を経済成長の柱に掲げる。そのために5年間の国の科学技術予算は、26兆円の確保を目指す。だが最先端の研究成果の創出や人材確保、国際化を達成するためには、多くの課題が噴出している。

 文部科学省の総合政策特別委員会は10月末、第5期科学技術基本計画の進捗(しんちょく)と分析結果を公表。日本の研究環境を取り巻く現状を示した。その中で、論文数の減少や若手研究者の伸び悩み、新しい研究領域の挑戦への不足などが課題だとした。

 中でもイノベーションの担い手となる若手の育成は優先事項。優秀な若手研究者を確保するため、博士課程学生の経済支援や博士研究員(ポスドク)に対する就職支援を引き続き行うとした。一方で、業績評価の比重を上げるなど国立大学での人事給与改革を促すべきだと明記した。

 研究成果に関しては、基礎研究の国際競争力強化に向けた「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)などの事業で優れた研究成果を生み出していると評価。だが、国際共著論文の数が伸び悩み、特に被引用回数が上位10%に入る論文数の世界シェア低下を指摘。打開のため、国際共同研究の支援や国際研究拠点の形成の促進、国際的なネットワーク構築支援を実施するとした。

 研究資金については、大学や国立研究開発法人の基盤的経費や競争的資金がほぼ横ばいの状態。科学研究費助成事業(科研費)の改革を推し進め柔軟な使い方を促す。

 さらに若手研究者の自律的な研究を支えるため、若手研究者を中心とする種目に重点化するなど配分の見直しを進めることを示した。また第5期計画では民間資金の積極的な導入を推進している。大学と企業などの組織対組織の大型共同研究を進め、多様な財源の確保が必要であるとした。

 科学技術イノベーションは、少子高齢化や地球温暖化などの世界的な課題を解決する力となる。現状の問題を解消する取り組みを速やかに実施し、科学技術で世界をリードすることが求められる。

 

(文=冨井哲雄)

日刊工業新聞2018年11月2日

  

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