「ICTで『儲かる農業』」支援する農機メーカーに求められること

井関農機が挑む

 担い手不足が深刻化する日本の農業。この問題を根本的に解決するには作業の効率化や作物自体の品質を向上させ、「魅力的=儲(もう)かる」農業を実現することが不可欠となる。これに対して、井関農機は情報通信技術(ICT)を活用した農業機械やサービスを開発し、農業の活性化を支援している。同社の動きを追った。(文=編集委員・松沢紗枝)

自治体などと協業


 井関農機は国や地方自治体、教育機関、ベンチャー企業などと協業し、農業のICT化を推進している。その中核を担うのが、つくばみらい事業所(茨城県つくばみらい市)内にある「夢ある農業総合研究所」だ。ハードとソフトの両面から実証・提案し、儲かる農業を具体化する。セミナーを行うなど農家へ技術を紹介する場にもなっている。

 例えば、田植機やトラクター、コンバインなど農機にカメラや各種ICT端末を付随して、さまざまな作業の正確性や効率化につなげていく。

 有人監視型ロボットトラクターは、使用者が農地内か農地周辺で監視している状態で無人トラクターをリモコンで操作する。1台での作業やオペレーターが運転する有人トラクターとの2台同時作業ができる。これにより作業の省力化や生産性を向上させる。機械の前方と後方、側面にセンサーとカメラを搭載する。周囲に人を検知すると安全制御が作動し自動的に停止する。

作物の品質安定


 可変施肥田植機は、センサーで土壌の肥沃(ひよく)度と深さを計測し、水田の状況に応じて最適な施肥量を自動で調整する。これにより、作物の品質が安定するとともに肥料コストが約15%低減したという事例がある。機械の導入などで従来機よりコストが100万円上昇するが、数年で償却は可能としている。

 また、ソフト面ではICTに強みを持つベンチャー企業と協業している。ドローンや人工衛星からの画像で作物の生育状況を可視化するサービスなど自社ではカバーできなかった支援をベンチャー企業とともに行う。そのほか、低コストで農業をするための技術や作物の品質を向上するための技術も研究している。

完全な無人化


 今後は、トラクターや田植機など農機の完全な無人化を目指していく。さらに、同研究所を統括する夢ある農業ソリューション推進部の三輪田克志部長は「現在、農業も量と品質の両方が重要視される。工場のように田畑や作物の状態を管理していくことが必要だ」と指摘する。そのために、農業関連のさまざまなデータを人工知能(AI)技術で分析するなどの方法も模索していく。

 農機メーカー各社がICTを活用した動きを加速させている。今後、井関農機が農家に選ばれる存在になるためには、差別化とともに、ICTの知識に左右されない使いやすさと、低コスト化が求められる。

日刊工業新聞2019年7月10日

  

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