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【コメント追加】省エネ機器の需要創出なるか…大企業にじわり広がる「ZEB化」の波

リコーや日生が導入
【コメント追加】省エネ機器の需要創出なるか…大企業にじわり広がる「ZEB化」の波

75%の省エネ化を達成したリコージャパン岐阜支社(屋上の太陽光パネル)

 リコージャパン(東京都港区、坂主智弘社長、03・6837・8800)と日本生命保険は、自社ビルをエネルギー消費を大幅に削減する「ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」にする。リコージャパンは岐阜支社に続き、熊本市と和歌山市の営業拠点のZEB化を決めた。全国に営業網を持つ大企業がZEB化を推進することで、最新鋭の省エネ機器の需要創出につながりそうだ。

 リコージャパンの熊本、和歌山の拠点とも移転し、省エネルギービルを新築する。2020年ごろの完成を予定。太陽光パネルやLED照明、高効率な空調機器などの設備に加え、照明・空調の制御システムを活用し、省エネを徹底する計画だ。

 国は「50%以上の省エネ化」をZEBの基準の一つとしている。リコージャパンは3月、国内の営業拠点を国のZEB基準にすると決めた。自社物件か一棟借りのビル159棟を対象としており、3月に第1号として岐阜支社が75%の省エネを達成した。

 リコーは17年、2050年までに再生可能エネルギー100%で事業を運営し「脱炭素」を目指すと発表した。実際の取り組みとして販売会社であるリコージャパンがZEB化に乗り出した。各拠点が所有する支社長車も電気自動車などにする。

 日本生命も新築する営業拠点は原則としてZEB化する。18年に完成した茨城県結城市の営業拠点はエネルギー消費量を50%以上低減した。同社は全国に1500の営業拠点を持つ。

 ZEB達成には太陽光パネル、蓄電池、高断熱ガラスなどが必要だが、高価な機器も多い。全国に多数の拠点を持つ大企業のZEB化によってコスト削減も期待できる。国は30年までに新築ビルのZEB化を標準化する方針で、補助金を用意して普及を支援している。
日刊工業新聞2019年7月1日
江原央樹
江原央樹 Ehara Hiroki 日本能率協会コンサルティング
本記事のリコーや日本生命の取り組みは、気候変動対策として、脱炭素化に向けた企業として重要かつ先導的な取組みである。脱炭素化とはCO₂排出量をゼロにするか、排出量と吸収・固定量を同量にするか(以降「カーボンニュートラル」と言う)のいずれかの状態である。世界規模あるいは国単位でみた場合には、CO₂排出量のゼロ化はかなりハードルが高いため、カーボンニュートラルを目指すことが重要になってくる。そのためには、エネルギーの負荷を削減する(≒使わない)→エネルギーの消費を減らす・ずらす→環境にやさしいエネルギー利用に転換するという順序で対策の検討と着実な実行が必要であり、その第一歩としてZEB化は有力な対策の一つである。

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