「三菱スペースジェット」ボンバル事業買収で体制は盤石になるか

サービス網の整備加速

 三菱重工業はカナダの航空機大手ボンバルディアから、小型ジェット旅客機事業を買収することで合意した。5億5000万ドル(約590億円)で小型機「CRJ事業」を取得し、約2億ドル(約210億円)の債務も引き受ける。ボンバルディアの顧客基盤やアフターサービス部門などを獲得し、開発中の国産小型ジェット旅客機「三菱スペースジェット」の事業体制を盤石にする。2020年半ばの初号機納入を控え、三菱重工グループの小型機事業は次のフェーズに移行する。(文=名古屋編集委員・長塚崇寛、編集委員・嶋田歩)

 三菱重工は今回の買収で、完成機事業の長期的な事業基盤を構築する狙い。航空機は一度納入すると20年以上の運航が続き、完成機メーカーには機体メンテナンスなどアフターサービス体制の整備が不可欠。

 完成機の製造・販売の実務を担う三菱航空機(愛知県豊山町)は、ボンバルディアの拠点や人材、サービスノウハウを活用し、サービス網の整備を加速する。

 三菱航空機は米国の規制に対応した70席級の新機種「スペースジェットM100」の開発にも着手している。CRJは100席以下の航空機市場で3―4割のシェアを握る。既存顧客との接点を持つことで、M100の提案力を高めるなど事業基盤の底上げにつなげる。三菱重工の泉沢清次社長は「今回の事業承継は強靱(きょうじん)でグローバルな航空機事業を構築する戦略の中で、重要な一歩だ」とコメントしている。

 両社の思惑にズレがあった赤字の製造部門は、ボンバルディアに残ることで決着した。CRJの受注残は三菱重工の委託によってボンバルディアが製造するほか、部品供給も継続する。機体製造を受注残機体の納入後、20年後半に終了する。

 ボンバルディアは同事業の売却により、ビジネスジェットを除く民間商用機市場から撤退することになる。100席未満のリージョナル機市場では今後、米ボーイングの傘下となったブラジル・エンブラエルと、三菱重工グループの一騎打ちの様相が鮮明になる。

210億円債務引き受け 訴訟の賠償懸念も払拭


 ボンバルディアのCRJ事業の譲渡契約を受け、26日の三菱重工業の株価は前日比87円安の4720円だった。民間旅客機への参入表明から累計6000億円以上つぎ込んだとされる同事業。5回の納入延期などで“遅れた時間”をいかに取り戻していけるかを市場は注視している。

 今回の事業譲渡契約で三菱重工側は約590億円の買収金額のほかに、約210億円の債務も引き受ける。他方で米国とカナダの4カ所のサービス拠点や営業人材、CRJシリーズの保守やカスタマーサポート体制も手に入れる。ボンバルディアとは企業機密を不正入手したとして訴訟争いがあったが、事業買収で訴訟が取り下げられる見通し。賠償金支払いなどの懸念材料が払拭(ふっしょく)される。後は受注をどう伸ばすかだ。

 小型旅客機は日に何回も使われることが多く、サポート体制が不可欠とされる。納入でエアラインとの間に築いた絆もある。一貫体制を今後どう生かすかがカギになる。

日刊工業新聞2019年6月27日

  

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