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インキ使わず印刷、京大が開発した技術の仕組み

高分子構造を制御
インキ使わず印刷、京大が開発した技術の仕組み

指先より小さなフィルムにも精密印刷できる(京大アイセムス提供)

 京都大学物質―細胞統合システム拠点(アイセムス)のシバニア・イーサン教授と伊藤真陽特定助教らは、インキを使わず高分子の構造を制御して色を出す「OM技術」を開発した。通常の商業印刷の40倍相当の解像度1万4000dpi(1インチ当たりドット)を達成し、微細なフィルムへの絵画の印刷に成功した。アクリルやポリスチレン、ポリカーボネートなどのプラスチックに対応し、セキュリティー用印刷などで応用を見込む。

 コガネムシに似た積層構造で発色する。断面が繊維状になる高分子特有の亀裂をナノメートル(ナノは10億分の1)サイズで制御し、構造色で特定の色を出すことに成功した。色を出さない部分を覆って光を当てると、特定部分だけ反射し発色する精密印刷ができる。当てる光の波長に応じて発色する色合いを変えられる。

 色素を使わないため色あせず、環境への負荷も少ない。一般的な材料に印刷できるためコストも低い。紙幣や身分証明書などの偽造防止対策の印刷に適しているという。構造制御技術を応用して微小な流体チップを作り、汗や血液などを分析する医療用チップの開発も考えられる。
日刊工業新聞2019年6月20日

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