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金型の傷を触覚で読み取る職人技、「ファスナー」が習得を容易にする

弘前大学が発見
金型の傷を触覚で読み取る職人技、「ファスナー」が習得を容易にする

触覚検査の職人の感覚が得られる

 弘前大学の竹囲年延助教は、樹脂ファスナーのらせんコイルを指先に添えて平面をなぞると触覚が増幅されることを発見した。訓練していない人でも深さ5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の微細なくぼみを感じとれた。一度、感覚をつかむとコイルの補助がなくても感じとりやすくなった。金型や自動車ボディー表面の傷やへこみなど、触覚検査では専門の職人を訓練してきた。幅広い人材の即戦力化が期待される。

 樹脂ファスナーのコイルを指の腹と平面の台の間に挟んでなぞると、微細な凹凸を感じやすくなる。金属表面に切削加工で正規分布曲線状のへこみを作ってなぞったところ、深さ80マイクロメートルのくぼみは約10倍、深さ5マイクロメートルのくぼみは約2倍に感度を増幅させられた。

 コイルは厚さ1ミリメートル以下から3ミリメートル程度まで、いずれも増感効果を確認した。樹脂ファスナーは入手が容易なことも利点。樹脂ファスナーのコイルを含む増感構造で幅広く特許を出願した。指の圧力や速度などのなぞり方を訓練する効果もあるとみられる。触覚の計測方法も整えたため、今後なぞり検査をロボット化していく。

 金型表面の凹凸はプレス型では潤滑油のなじみ(表面拡散)、成形型では溶融樹脂のなじみや仕上がりなどを左右する。触覚を鍛えた職人が検査を支えてきた。だが職人の高齢化や人手不足が問題になっている。

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日刊工業新聞2019年6月18日

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