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いつまで保管?廃棄や返却は?金型の管理が中小企業の経営を圧迫!

下請け環境改善へ 経産省が金型管理適正化を加速
いつまで保管?廃棄や返却は?金型の管理が中小企業の経営を圧迫!

金型管理は中小企業にとって大きな負担に(イメージ)

 経済産業省は下請け企業と発注企業間における金型管理の取引適正化に向けた取り組みを加速させる。産学官の有識者らが参画する協議会を近く発足し、型の廃棄や返却など型管理の目安を策定する。型管理をめぐっては発注企業の要請に基づき下請け企業が長期にわたって型の保管を強いられ、経営の圧迫要因になっている。目安を示すことで改善を促し、下請けの大半を占める中小企業の競争力を強化する。
(取材・下氏香菜子、竹中初音)

産学官の協議会発足


 協議会で有識者らが型の返却、廃棄の手順、型の保管期間などの目安について議論し取りまとめる。各業界や企業が目安を参考にして型管理の適正化を円滑に進められるようにする。経産省はそれと並行し、業界やサプライチェーン、地域において影響力が大きい企業に対し集中的に働きかけるほか、下請法に違反する事案については改善に向けた指導を一層徹底する。

 経産省は2016年9月、下請け取引適正化に関する政策「未来志向型の取引慣行に向けて(世耕プラン)」を策定し、型管理の適正化を重点課題の一つに掲げ推進してきた。17年7月には型管理の適正化に向けたアクションプランを公表。業界団体や企業に対し、不要な型の廃棄や管理費負担、保管期間について20年3月末までに取引間で協議・合意すべきだと示し、自動車や電機など各業界団体には自主行動計画の策定を要請した。

中小の経営悪化を防ぐ


 経産省が新たな戦略を打ち出すのは、下請け企業、発注企業ともに取引適正化に向けた取り組みが進んでいない現状があるからだ。経産省が18年12月に公表した自主行動計画のフォローアップ調査では、型の返却・廃棄について「概ねできた」と回答した受注企業の回答は18年度約2割、発注企業の回答は約4割となり、ともに前年度比で横ばい。保管費用を発注企業に概ね負担してもらったと回答した受注企業は18年度に約1割、発注企業は約4割にとどまった。

 受注企業のうち、型の一斉点検や保管費用などに関する発注企業との協議が未実施である企業が約半数を占めることも判明した。発注企業と協議して型の棚卸しや不要な型を随時廃棄する先進的な下請け企業が出始める一方、足踏み状態の企業が大半を占め進捗(しんちょく)にバラつきが目立った。

 中小企業を中心に取引先との協議の進め方が分からず二の足を踏んでいたり、協議に時間がかかっていたりすることが背景にある。型管理の目安があれば、従来は曖昧だった型の所有や保管期間について取引間で協議を進めやすくなり、「適正化の進展が期待できる」(経産省製造産業局の担当者)。

 型管理の適正化が進まなければ下請け中小企業の経営悪化は避けられず、業界全体の競争力が低下する恐れもある。今後は経産省の支援に加え、発注企業と下請け企業がともに危機感を持って協議に臨み、型管理をめぐる課題を解決していく姿勢が問われそうだ。
         


インタビュー/日本金型工業会会長(小出製作所社長)小出悟氏/強者に優しい現状打破


 多くの産業の「縁の下の力持ち」の役割を果たしてきた金型産業。「強者が守られている現状を打破する必要がある」と指摘する日本金型工業会の小出悟会長に今回の取り組みなどについて聞いた。

―取り組みをどう評価していますか。

「金型に関する取り組みは以前から行われてきたと認識しているが、政治的パフォーマンスの側面があるような印象だった。世耕弘成経産相の就任後のここ3年ほどで本当の意味で光が当たり、実の伴った取り組みになってきたと思う」

―今回は主に金型の保管などについての協議が始まります。

「金型メーカーは、金型を製造して納めることを専門にする企業と、金型を使って部品の量産も並行して手がける企業に大きく分けられる。特に後者では現在、金型の保全にかかる費用を発注企業ではなく下請けが負担している。この現状はおかしい。輸出産業は下請けありきで回っているという認識が広がってほしい」

―取り組みでさらに深耕すべき点は。

「特に強調したいのは金型代金の支払いについてだ。現状は一度納品すれば代金を受け取れるのか、納品後のやりとりを経て量産できる状態になってからなのか、線引きが曖昧だ。そのため下請けは金融機関からの借入額が膨らみ、利息負担に苦しむ傾向にある。支払いのタイミングを具体的に法整備することで、下請けの収益力向上や発注企業からの突然のキャンセルなどへの対応が図れるのではないだろうか」

―現状の“泣き寝入り”状態から脱することができますね。

「例えば自動車産業では、ティア3(3次下請け)より下の立場でまだ改善の余地があると思う。仕事をもらう立場としては、仕事を出す側の秩序をきちんと整えてほしい。そのためには『下請け』という言葉を使わないようにするのも手なのではないか」

―どのように変えるのでしょうか。

「下請けよりも『パートナー企業』の方がよいのではないだろうか。法律で使われている用語なので時間はかかるかもしれないが、この名前があるために注文する側の『上から目線』が浸透しているのではないだろうか。金型メーカーが熾烈(しれつ)な環境に置かれている中で、そのような根本的部分から見直していく必要がある」

日本金型工業会会長(小出製作所社長)小出悟氏
日刊工業新聞2019年6月12日(トピックス)

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