保守点検の効率化へドローン投入、電力会社のもう一つの狙い

外販、新規ビジネスにつなぐ

 電力会社が発電所や送配電設備の保守点検で、飛行ロボット(ドローン)と人工知能(AI)を積極的に活用している。保守点検は電力の安定供給を支える業務だが、膨大な自社施設をカバーする人手の確保は、少子高齢化で難しくなる。それを補う手段として活用が進んでいる。(文=戸村智幸、大阪・香西貴之、仙台・苦瓜朋子)

点検日数半減


 関西電力は3月、鉄塔の一番上に架けられたアース線を自動追尾する点検工事にドローンを採用した。電力会社では初めてだ。従来の点検工事に比べ、人員や時間が約半分に削減できるという。

 2019年度からは空中だけではなく、水力発電所向けに取り入れた水を発電用水車まで送水する鉄管内にも、ドローンを活用する。テールをつけて改良したドローンが鉄管内を飛行し、さびや劣化状況を高画質カメラで撮影し点検する。「従来に比べ、点検日数や費用を半分以上削減する」(岩根茂樹社長)。

 自社で活用するだけでなく、他電力に外販して新規ビジネスにつなげていく。「19年度中に体制を整え年間10件程度の受注を目指す」(同)。

ミスなく検知


 東京電力パワーグリッド(PG)は送電線のキズなどの異常検知にAIを活用している。通常は作業員が鉄塔に登って点検するが、山間部の鉄塔では難しいため、ヘリコプターで撮影した映像をAIで解析する。ディープラーニング(深層学習)により、ミスなく検知できる。従来は人が映像をスロー再生して確認するため、時間がかかっていた。

 今後はドローンで市街地の送電線を撮影し、AIで異常検知する計画。飛行可能距離など実施体制を詰めるが、「技術的には難しくない」(東電PG)と見込む。市街地の点検にあたる作業者の負担軽減をにらむ。

 東北電力はドローンとAIで、火力発電所のタービンや配管など屋内設備の日常点検の自動化に取り組む。日本ユニシスと共同でシステム開発を始めた。ドローンが所内を自律飛行してデータを採取し、AIで異常を検出する。画像のほか音、振動、温度、臭気をセンサーで検知し、所員の五感を再現する。

高所や狭所も


 現在は所内の設備点検に1日当たり最大12時間かけている。負担軽減に加え、目視しづらい高所や狭所の点検が行き届き、経験の差によるムラも解消される。千葉耕助発電・販売カンパニー火力部課長は「点検手法の多様化により、異常兆候の早期発見につながる」と期待する。

 9月廃止予定の秋田火力発電所3号機(秋田市)で実証を始める。19年度内にシステムを開発し、試作機を完成させる。23年新設の上越火力発電所1号機(新潟県上越市)や既設火力発電所での実用化を目指す。5年後をめどに製造業にも対応する汎用性の高いシステムを開発し、外販を視野に入れる。

 電力各社は小売り全面自由化で経営効率化が求められている。中長期的には人口減少や省エネルギー進展により、電力需要の低下が見込まれる。保守点検での活用にとどまらず、外販実績を伸ばし、新たな収益源に育てる狙いもある。

日刊工業新聞2019年6月13日

  

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