ビルとEVの電力相互供給、日産に吹く追い風

EV販売の付加価値に

 日産自動車が、電気自動車(EV)とビルの間で電力を相互供給する「V2B(ビークル・ツー・ビルディング)」の普及に向けた取り組みを活発化している。通信会社や電力会社と実証実験を行い、早期のサービス化を目指す。企業や自治体で二酸化炭素(CO2)削減ニーズが高まっていることが背景にある。日産はV2Bをテコに「リーフ」などのEVを拡販したい意向だ。

 V2Bは、電力変換装置(PCS)を介してEVとビルを接続し、ビルの太陽光発電でつくった電力でEVを充電したりする一方、EVの電力をビルに供給し停電時の電力を確保したり、系統から購入する電力の削減につなげたりする。日産はPCS販売は手がけておらず、V2BをユーザーがEVを購入する際の付加価値の一つとして訴求する。

 EVと建物の間で電力を相互供給するシステムでは、「B」を「H(ホーム)」に変えた「V2H」の普及が進む。ただ「引き合いに勢いを感じるのはB。企業や自治体からの注目が高まっている」と林隆介日産グローバルEV本部EVオペレーション部主担は話す。

 産業革命前からの気温上昇を2度C以内に抑える目標を定めたパリ協定が2016年に発効し、CO2削減が課題になっていることが追い風だ。ESG(環境・社会・企業統治)を重視し、事業で使う電気全量の再生エネルギー化を目指す国際組織「RE100」に加盟する企業や自治体などの関心が特に高いという。

 日産はV2Bの普及拡大に向け実証実験を進めている。18年12月にNTT西日本などと協業し、ビルのエネルギー費用低減とCO2削減の効果を検証する取り組みを始めた。また19年1月には九州電力などと組み、ビルの最大需要電力を削減する試験プロジェクトに着手した。技術検証という意味合いは薄く、「ビジネスとしてどう確立させるかの検証」(林主担)が主目的で、19年度中のサービス化を目指す。

 給電機能を備えていれば基本的にはどのEVでもV2Bシステムを構成できる。今後、完成車メーカー各社がEVを投入する計画で、日産の取り組みは敵に塩を送ることになりかねない。

 しかし日産は他社に先行して10年にリーフを投入し、EV関連のノウハウを蓄積してきた。「V2B運用に際し、駐車場のどこに充電器を設置すべきかなど、かゆいところに手が届く提案ができる」と林主担は強調する。車両の魅力に加え、V2Bの提案力でEV販売に弾みを付けたい考えだ。

日刊工業新聞2019年4月10日

  

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