高齢ドライバーの事故軽減へ、自動車メーカーと病院などがデータ共有

システム標準化へ動く

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 トヨタ自動車など自動車メーカーは共同で、車載センサーを使って事故時のデータを救急救命に役立てる仕組み作りを強化する。自動車が歩行者に衝突した際のデータを基に、歩行者の傷害の度合いを瞬時に予測するシステムを構築し、医療機関と共有する。2021年に実証実験を始める。安全技術の進展などを背景に、交通事故の件数は減少傾向にあるが、高齢ドライバーによる事故は増えている。事故被害の軽減に向け、業界で協調して取り組みを加速する。

 自動車メーカーや大学などで構成する業界団体、自動車技術会(東京都千代田区)が、このほどシステムの標準化に向けて検討委員会を設置した。傷害の度合いなどの情報を医療機関や消防署と早急に共有するために、自動車メーカーがどのようなデータを提供するかなどを議論する。車外の歩行者や後席乗員の状態を推定するアルゴリズムを開発し、標準化を促すことで実用化済みの救急自動通報システム「Dコールネット」を強化する。

 すでに事故時の前席乗員の傷害の度合いを予測するアルゴリズムはトヨタ自動車やホンダなどが共同開発した。Dコールネットに採用されており、衝突方向や乗員の年齢など6種類の事故情報を車から吸い上げ、サーバー上で過去280万件の事故データと合わせて統計処理し、医療機関や消防署に状態を伝える仕組みだ。今回は新たに車外の歩行者や後席乗員を対象とする。

自技会の坂本秀行会長(日産自動車副社長)は「車に搭載されたセンサーやカメラが増えたことで車両から生成できるデータが増えており、業界で協調して救急救命分野に役立てたい」としている。

 政府は今夏に策定する成長戦略に、相乗りタクシーの導入や自治体などによる自家用車の有償運送制度の創設など、次世代モビリティーの実現に向けた政策を盛り込む方針だ。そのため、ITを活用した配車サービスシステムの自治体への導入や、道路運送法上のルール整備などを検討し、車を運転しない高齢者も移動しやすい環境整備を進める。

 人口減少が進む地方は、交通手段として自動車への依存度が高い一方、公共交通機関のドライバー不足が深刻化している。相乗りタクシーなど新たな移動手段が普及すれば、運転免許証を自主返納した高齢者も比較的安価に、自由に移動しやすくなる。高齢者らが自ら運転する必要がなくなる環境を整備し、運転ミスによる交通事故の減少を目指す。

 自民党も高齢ドライバーの事故防止などに向けた提言書を安倍晋三首相に提出している。自動ブレーキを装備した「安全運転サポート車」限定の運転免許証など、高齢者の特性に応じた免許制度の見直しや、高齢者が免許を自主返納しやすい環境整備を求めている。
                   

日刊工業新聞2019年6月3日

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