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診断精度は87%、肝がん予測するAI

東大と島津が開発
 東京大学医学部付属病院検査部の佐藤雅哉助教、島津製作所基盤技術研究所の森本健太郎主任らは、患者のデータから肝がんの存在を予測する人工知能(AI)を開発した。少ないサンプル数での予測に向くアルゴリズム(算法)を使い、肝がんを含む肝疾患患者の年齢や性別、検査値などの情報を元にAIを構築。高い精度で肝がんを診断できた。疾患の診断支援へ応用が期待される。成果は30日、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表された。

 研究チームはまず、腫瘍マーカーや肝臓の検査値など、得られた患者情報を元に肝がんを予測するにはどの手法が最適かを判断するプログラムを作成した。具体的には、予測したいことや収集した情報の量に応じて、ニューラルネットワークや深層学習(ディープラーニング)といったさまざまな手法のどれを活用するのが最適かを判定するプログラムを作った。

 作成したプログラムを元に、肝がん患者539人と非肝がん患者1043人の情報について検討すると、肝がんを予測するアルゴリズムとして「勾配ブースティング決定木」という従来の手法が最適だと分かった。導き出されたパラメーター値と勾配ブースティング決定木で肝がん予測の精度を評価すると、87・3%の確率で正しく診断し、特異性も高かった。一方、ディープラーニングを使った場合は83・5%だった。

 医学研究の場合、数万人規模の患者サンプルを収集するのは難しい。限られた情報から予測性能を最大化する仕組みは、肝がんだけではなく他の疾患や他分野への応用も期待される。

                 

日刊工業新聞2019年5月31日

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