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難治がんに薬剤送り込む「ナノマシン」の仕組み

iCONMと東大など開発
 ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)の片岡一則センター長と東京大学の宮田完二郎准教授らは、血液中の医薬品を捉えて保護する大きさ約20ナノメートル(ナノは10億分の1)以下の「核酸医薬搭載ナノマシン」を開発した。脳や膵臓(すいぞう)といった医薬品が到達しにくい難治がんに、薬剤を送り込むことができる。名古屋大学との共同研究。

 成果は24日、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。

 がん組織の特徴的な遺伝子に働きかける「核酸医薬」が、新しい治療薬として注目されている。核酸医薬は血液中で分解されやすく、尿として排出される。核酸医薬を保護するために、脂質ナノ粒子で包む手法などが検討されているが、がんに存在する線維性の組織や、脳腫瘍で物質が通り抜けるのを阻害する「血液―脳腫瘍関門」と呼ばれる生体バリアーによって、治療部位に届きにくくなっている。

 研究チームは、核酸医薬に結合する部位を持つY字型の高分子を開発した。この高分子が核酸医薬と結合して核酸医薬搭載ナノマシンとなり、血液中で分解されるのを防ぐ。約20ナノメートルと小さく、脂質ナノ粒子では大きくて通れなかった生体バリアーを通り抜けることができた。

 一方で、核酸医薬に高分子が結合したままではがん組織の標的遺伝子に結合する能力が落ちる。開発した核酸医薬搭載ナノマシンは結合と解離を繰り返しているため、効率的にがんの遺伝子に作用することができた。膵臓がんや脳腫瘍を再現したマウスに投与すると、生存期間が大幅に伸びた。特に脳腫瘍では投与した10匹全てを生存させることに成功した。

            
日刊工業新聞2019年4月25日

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