エネルギー事業共通のデジタルプラットフォーム、東芝が構築へ

 東芝は、発電や送配電などエネルギー事業共通のデジタルプラットフォーム(基盤)を構築する。1―2年後に同基盤を活用した発電設備の故障予知サービスなどの提供を目指す。IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)といったITに、長年培ってきた製造や設備保守などの知見を融合して新規事業の創出を急ぐ。グループ全体で取り組んでいるCPS(サイバー・フィジカル・システム)テクノロジー企業への変革の一環だ。

 東芝子会社の東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区)が1月に新組織「DXビジネスデザインプロジェクトチーム」を発足させた。社内から人材を集めて、発電や送配電、アグリゲーション(電力需給調整)などの事業部ごとの縦割りを越えて新たなビジネスモデル構築を図る。

 現在は自社の発電所で設備の故障予知や性能監視サービスを検証している。デジタル技術を使って予測した主要部品の故障頻度や故障時期、性能を実際に監視してその効果を試している。海外での検証も検討する。

 東芝を含む国内重電大手は基盤事業だった発電システムの市場縮小に直面する。環境問題を背景に先進国で火力発電所への風当たりが強くなり、国内では原子力発電所の新増設の見通しが立たない。エネルギー分野で新たなビジネスモデルの構築が不可欠で、CPSは苦境を抜け出す一つの解になりそうだ。

日刊工業新聞2019年5月23日



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東芝会長が決意するデジタル製造業


 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が占有しているデータ量は世界全体の20%に満たないとの見方がある。各国が規制に乗り出し、データ収集やビジネスモデルは限界に近づいている。世界にはまだ手つかずのデータが80―90%残されている。データビジネスは、これからが本丸だ。

 日本の製造業は最高の技術を持ち、フィジカル(現実世界)領域に大量のハードを供給してきた。次の時代、これが強みになる。これまでに発明された現実世界の技術は、サイバー技術よりもはるかに難しい。

 GAFAのようなサイバー企業は発電所や自動車などハードから生み出されたデータを喉から手が出るほど欲しがっているが、うまく扱えないはずだ。

 日本の製造業の要素技術は世界一。フィジカルの強さを維持し、デジタルトランスフォーメーションを進め、ビジネスにつなげれば十分な勝機がある。

 東芝は昨年11月、今後5年間の中期計画「東芝Nextプラン」を発表した。目指すのは世界有数の「サイバー・フィジカル・システムテクノロジー」企業だ。サイバー技術を使って、フィジカルをコントロールし、社会変革を促す。半導体や電池などのコア技術の強みを維持しつつ、デジタルビジネスにシフトする。

 世界にはデータが無限に存在し、解決すべき社会課題もたくさんある。

 米配車大手のウーバー・テクノロジーズがライドシェア(相乗り)の領域だけであれだけの企業価値を生み出したように、フィジカルをコントロールできれば水処理や橋梁、発電、ヘルスケアなどさまざまな分野で人々の生活に多大な影響を及ぼすビジネスを生み出せるはずだ。

 例えば橋梁。揺れ方を精緻に分析し、収集した大量のデータを基に、どのように設計したらコストが下がるかを計算するソフトを作れる。

 これにはデータ処理能力だけでなく、橋梁社会の設計能力やプロジェクト管理のノウハウが必要だ。標準モデルとして世界中に適用していけば、橋梁のプラットフォーマーになるだろう。

 デジタル製造業になる決意を持たねば次の時代は生き残れない。これまでは、まねされない技術を苦労して生み出し、囲い込んで勝負する時代だったが、これからは標準ソフトを開発し、皆に使ってもらうオープンイノベーションが重要だ。ゲームの仕方は逆転する。経営者、従業員とも違いを認識し、多様で柔軟な発想力が必要だと考えている。
(車谷暢昭会長兼CEO)

日刊工業新聞2019年2月27日

  

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