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電機大手、収益力から見た勝ち組はどこ?

20年3月期見通し、日立とソニーは強み明確に
電機大手、収益力から見た勝ち組はどこ?

日立の東原敏昭社長(左)とソニーの吉田憲一郎社長

 電機大手は収益向上へ改革を継続する。日立製作所は、社会イノベーション事業加速へグループ再編の総仕上げに入る。2020年3月期連結業績(国際会計基準)は減収予想だが、低収益事業の再編を優先させた結果だ。営業利益は3年連続の過去最高更新を目指す。将来像として、重点投資するIoT(モノのインターネット)共通基盤「ルマーダ」を軸とした姿を描く。この将来像の中では、売却を検討する上場子会社の日立化成など“御三家”すら居場所がなさそうだ。

 日立製作所の最高財務責任者(CFO)の西山光秋執行役専務は26日の会見で「(19年3月期までに)減収でも利益を稼ぐ体質を作れた。新たなステージへ移る準備ができた」と胸を張った。20年3月期は日立国際電気などのグループ再編で2070億円の減収となり、中国経済の減速や為替も逆風だ。結果として日立化成を除く全ての事業部門・上場子会社が減収の見通し。

 今回からセグメント分けを変更し、IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフと各上場子会社という構成にした。これまでに実行した再編や事業撤退効果で、産業機器などのインダストリー部門の営業利益は前年同期比2・7倍の560億円、自動車部品や家電などのライフ部門が同35・6%増の880億円に伸びる計画だ。売却を検討する日立化成も業績自体は悪くない。さらなるグループ再編は「それぞれの事業体と日立製作所、あるいはルマーダ事業のシナジーがどうやったら出せるかを考えている。ありとあらゆる施策の検討は常にしている」(西山専務)と含みを持たせる。

 20年3月期の設備投資は4000億円と同3・5%減らす計画。ただ、主にルマーダへの戦略投資は同600億円上積みする。単なる製造業からの事業構造転換をグループ挙げて急ぐ。

 ソニーは2020年3月期を最終年度とする中期経営計画の営業利益目標を見直す。十時裕樹専務最高財務責任者(CFO)は業績説明会で「(19年3月期の)1年間だけでも市場に大きな変化があった。一部の分野で目標と実態がかけ離れた」と見直しの理由を説明した。今後新たな中計を策定しない方針も明らかにした。

 19年3月期連結業績(米国会計基準)の営業利益は、音楽分野におけるEMIの連結子会社化など、一時的な増益要因が大きく影響。それらの要因を除いた上でも、十時CFOは「(全社で営業利益が目標値から)1000億円以上、上振れしている」という。

 加えて、19年3月期は家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」向けコンテンツの販売好調も目標見直しの一因。20年3月期のゲーム事業売上高はPS4の販売減で前年並み、次世代機の開発費増で営業減益を見込む。半導体分野は、イメージセンサーの大判化やスマートフォンカメラの多眼化が今後追い風となる見込みだ。一方で、スマートフォンの販売台数減少が業績を押し下げる。十時CFOは「スマホ事業の縮小を受けて、商品力の強化に方向性を転換したことも目標取り下げの一因」と話す。

 20年3月期連結業績予想は、売上高が同1・5%増の8兆8000億円。3年連続で過去最高の更新を狙う。当期純利益はスポティファイ株式の上場の反動減で前期比45・4%減の5000億円と大幅減益になる見通しだ。営業利益は同9・4%減の8100億円。EMIの連結子会社化の反動減が主な要因。

 三菱電機は、2020年3月期連結業績(国際会計基準)の営業利益が同1・6%増の2950億円になる見通しだ。米中貿易摩擦をきっかけに18年後半からアジア地域でFA関連など産業機器の需要は落ち込んでいるが、下期は回復へ向かう。主要通貨の円高進行を見込んでおり、為替影響を除く営業増益幅は同9%増に拡大する。

 FAなどの産業メカトロニクス部門は営業利益予想が同6・7%減の1330億円と依然厳しく、特に上期は中国と韓国で需要低迷が続きそうだ。自動車の電動化・自動運転関連の先行投資負担も響く。一方、下期に第5世代通信(5G)開始に伴うスマートフォンや有機ELパネルの設備投資が一部回復する見通し。国内外で好調なエアコンや電子デバイスも営業増益に寄与する。

 20年3月期の設備投資は同横ばいの2700億円を計画。自動車機器やFA、パワー半導体などへ重点的に振り向けるという。

IT2社は?


 一方のIT2社はどうか。富士通の2020年3月期連結業績予想(国際会計基準)は、営業利益が前期比0・2%減の1300億円を見込む。採算の厳しいハードウエア事業の再編や固定費削減などは一巡したが、海外拠点の再編継続や、市況変化による半導体の落ち込みが足かせとなり、売上高営業利益率は前期比0・2ポイント増の3・5%にとどまる見通し。反転攻勢は時田隆仁次期社長に委ねられる格好。年間配当は前期比10円増の160円とする。

 19年3月期は退職給付制度の変更に伴う892億円の一時利益などを使って経営改革を推進。田中達也社長が4年がかりで進めてきた選択と集中による「形を変える」取り組みは大きく進展した。だが、収益向上などの「質を変える」施策には手こずり、成長の伸びしろとしていたソフト・サービス事業の海外展開も振るわなかった。

 塚野英博副社長は、主力のソフト・サービス事業の海外展開について「19年度(20年3月期)が底で、19年度以降にキャッシュフローへのインパクトが出てくる」と改革への手応えを強調した。ソフト・サービスを中核とする「テクノロジーソリューション」部門の営業利益率は20年3月期が前期比1・5ポイント増の7・5%を予測している。10%以上の目標達成は時田新体制に託すことになる。

 NECの2020年3月期連結業績予想(国際会計基準)は、営業利益が前期比88・1%増の1100億円と、大幅増に転じる見込みだ。19年3月期に、懸案の海外事業の構造改革に200億円を投じ、黒字化のめどを付けた。活況な情報通信技術(ICT)投資を反映し、企業システム、ネットワークサービス、システムの主要3事業もそろって増益の見通し。12年ぶりに中間配当を復活し、年間配当は前期比20円増の60円とする。

 19年3月期は海外の事業再編に加え、国内の固定費削減や生産拠点の再編を含め構造改革費用として、計500億円を投じた。連結売上高はオランダのKMDの買収でかさ上げされたが、営業利益、当期利益とも前期を下回った。

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