#1 デジタル広告、あなたもやらなきゃもったいない
プロが教える 個人経営や中小企業のための 月5000円でできるデジタル広告【全5回】
僕は東京都渋谷区東という町に住んでいます。町の周辺はちょうど渋谷駅から代官山にかけて再開発の真っ只中で、「いつの間に?」というかんじで、路面に新しいお店ができていたりします。この、いつの間に?というのは、お店にとってはチャンスロスですよね。お店のすぐ近くに住む見込み客に、このままずっと気づいてもらえないなんて。で、それ解消できると思うんです。デジタル広告で。でもなぜか、ほとんど誰もやってないんですよね。
デジタル広告、平たく言えばWEB広告あるいはインターネット広告の普及によって変わったもの。いろいろありますが、最も大きく変わったのは、広告主の数です。広告といっても本屋さんの店員が手書きで本の解説を棚にペタッと貼ったり、魚屋さんが鯛に3千円の値札を付けるのもPOPと呼ばれる立派な広告ですが、何らかのメディアにお金を払って広告表現を露出し多くの人の目に触れるようにする、狭義の広告主が増えたんですね。
広告の花形と言えばTVCMですが、これは大変なお金がかかります。首都圏や全国だとCM素材の制作費と媒体費合わせて1億円以上はかけないとほとんどの人の目に触れないまま終わるでしょう(業界用語で「蒸発して終わり」などと呼ばれる状態)。
地方ローカルでも1千万円~数千万円といった費用感です。そして、それだけ予算を投じて必ずそれを超えるだけの収益は見込めるのか?というと、そうとは限りません。広告にお金をかけすぎて倒産する企業も少なくはありません。地域に根ざした英会話学校とか弁護士事務所などは電車の車内広告などをよく利用するようですね。交通広告、OOH(Out of home)と呼ばれるいわゆる看板や、新聞、チラシなどにしても、小さな会社にとっては大きな投資で、それに見合う収益があるかはなかなか見えないものです。
つまり、広告というのは参入障壁が高かったんです。
それを打ち壊したのがデジタル広告です。なにしろ、個人でも世界に向けて広告が打てるのですから。
インターネットというと、「世界に向けて」といった言葉がよくくっついてきますよね。「あなたの映像を世界が見るのだ」といった。まあ物理的には可能でしょうが、もしあなたの営んでいるお店が、ドバイの富豪にまでお客として来てもらおうとでも思わない限り、世界に向けて広告を発信する意味はありません。むしろ、自分のお店に来てくれそうな、商圏に住んでいる人やその地域の会社に通う人にだけ限って発信できる、そういった柔軟性、ターゲットの限定性がデジタル広告の強みです。
想像してほしいのですが、あなたのSNSタイムラインにご近所にお店ができた、あるいは知ったお店がセールをやっている、といった広告が出てきたら、普段見ている広告よりも気になって目をとめませんか?データがあるわけではないですが、大企業がガーッとバラ撒く広告よりも注目度は高くなるように感じます。
デジタル広告の強みを活かせれば、個人や個店レベルできっと大きな収益増が見込めるでしょう。
僕は大小さまざまな企業や自治体の、TVCMからデジタル広告、店頭まで全ての広告に携わるクリエイティブディレクターです。自分の仕事にデジタルを採り入れたのは日本でもかなり早かった方だと思います。デジタル広告にはいろんな強みがあるものの、大企業と言えどそれを活かしきっているところは非常に少ないです。進化や変化が起き続けていて、理論先行で現場が付いていけないのです。ただ、僕は現場出身のクリエイティブディレクターですから、なんとかかんとかカタチにし、さらに自分流のデジタル広告テクを開発することで、商品やサービスの売上げを急増させることができるようになりました。
この連載シリーズでは、自分流のデジタル広告テクを、中小企業、自営業、個店、などが応用するとどうなるか、それを書いてみようと思います。
皆さんが普段利用されているSNS、これは「プラットフォーム」と呼ばれます。プラットフォームとは、多くの人が集まる場所を指しますが、集まること自体に大きな意味があります。つまり、集まってそこで会話をすることそのものが、プラットフォーム主催者にさまざまなデータを提供することになるからです。プラットフォームは、そのデータを元に広告を出し分けられるメディアとして価値を高め、基本的にはそこで収益を得ます。たとえばFacebookやInstagramは実名制(Facebookはもともと実際のプロフィールを公開することを参加資格としていて、Instagramもその精神を受け継いでいるという意味です。それがゆえにターゲティング精度も高いです。まあ、最近は当たり前のように匿名でFacebookやる人もいますが・・・)なので誰がどこに勤めていて、どんな趣味嗜好を持っているかまでもわかります。そのプロフィールのデータを元に広告を出し分けられますし、Twitterは会話に出てきたキーワードをデータとして広告を出し分けたりします(この個人データをどこまで使うことが許されるのかという線引きが国際的に揺れていますけども)。
SNSは本来、個人に向けて解放されたメディアなので、そこで配信される広告も個人レベルでできるような配慮がされています。操作画面ができる限りやさしくわかりやすくできているということです。ところが実際に利用している広告主のほとんどは大企業、通販企業、IT系。こんなもったいない話もありません。せっかくSNSを使っているのなら、個人業の広告にも使ってみてはどうでしょうか。
デジタル広告には「コツ」があります。もし僕流のコツでおやりになれば(たぶんですけど)低予算で成果が得られるのではないかと思っています。
明日公開の#2では、デジタル広告の具体的な運用法をケーキ屋さんを想定して紹介します。もし港区のケーキ屋さんが月5000円の予算でInstagram広告を始めたら?という設定で書きますが、もちろん居酒屋さんでもちょっとやり方を変えれば通用しますし、いろんなお店で応用できると思います。
さらにその次は、行政書士や会計士などのいわゆる士業が新規顧客獲得するには、とか、下町ロケット的な工場が元請け客を探してアプローチするには、などの応用編的なものを採り上げてみようと思います。
今日から5日連続で配信します。明日以降もどうぞお楽しみに。
連載一覧
#1 デジタル広告、あなたもやらなきゃもったいない
5月20日(月)、朝6時公開
#2 ケーキ屋さんがデジタル広告を始めるなら【Instagram広告編】
5月21日(火)、朝6時公開
#3 昨対150%を達成する、小霜流デジタル広告のやり方
5月22日(水)、朝6時公開
#4 士業がデジタル広告で仕事を見つけるには【リスティング/アドネットワーク編】
5月23日(木)、朝6時公開
#5 町工場がデジタル広告で元請けを探すなら【Facebook広告応用編】
5月24日(金)、朝6時公開
<プロフィール>
こしも・かずや クリエイティブディレクター、コピーライター。86年、東京大学法学部卒業、同年コピーライターとして博報堂入社。98年退社。現在、ノープロブレム合同会社、株式会社小霜オフィス代表。「プレイステーション」や「一番搾り」、「ドラゴンクエストX」、「VAIO」など多くの広告に携わる。マス・Web広告統合の先駆を務める。広告賞受賞多数。著書に「急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。」「ここらで広告コピーの本当の話をします。」などがある。
担当編集・平川透、グラフィック制作・影山明日香
デジタル広告、平たく言えばWEB広告あるいはインターネット広告の普及によって変わったもの。いろいろありますが、最も大きく変わったのは、広告主の数です。広告といっても本屋さんの店員が手書きで本の解説を棚にペタッと貼ったり、魚屋さんが鯛に3千円の値札を付けるのもPOPと呼ばれる立派な広告ですが、何らかのメディアにお金を払って広告表現を露出し多くの人の目に触れるようにする、狭義の広告主が増えたんですね。
成果は予算に比例するとは限りません
広告の花形と言えばTVCMですが、これは大変なお金がかかります。首都圏や全国だとCM素材の制作費と媒体費合わせて1億円以上はかけないとほとんどの人の目に触れないまま終わるでしょう(業界用語で「蒸発して終わり」などと呼ばれる状態)。
地方ローカルでも1千万円~数千万円といった費用感です。そして、それだけ予算を投じて必ずそれを超えるだけの収益は見込めるのか?というと、そうとは限りません。広告にお金をかけすぎて倒産する企業も少なくはありません。地域に根ざした英会話学校とか弁護士事務所などは電車の車内広告などをよく利用するようですね。交通広告、OOH(Out of home)と呼ばれるいわゆる看板や、新聞、チラシなどにしても、小さな会社にとっては大きな投資で、それに見合う収益があるかはなかなか見えないものです。
つまり、広告というのは参入障壁が高かったんです。
それを打ち壊したのがデジタル広告です。なにしろ、個人でも世界に向けて広告が打てるのですから。
伝えたい人に限って発信できるという強み
インターネットというと、「世界に向けて」といった言葉がよくくっついてきますよね。「あなたの映像を世界が見るのだ」といった。まあ物理的には可能でしょうが、もしあなたの営んでいるお店が、ドバイの富豪にまでお客として来てもらおうとでも思わない限り、世界に向けて広告を発信する意味はありません。むしろ、自分のお店に来てくれそうな、商圏に住んでいる人やその地域の会社に通う人にだけ限って発信できる、そういった柔軟性、ターゲットの限定性がデジタル広告の強みです。
想像してほしいのですが、あなたのSNSタイムラインにご近所にお店ができた、あるいは知ったお店がセールをやっている、といった広告が出てきたら、普段見ている広告よりも気になって目をとめませんか?データがあるわけではないですが、大企業がガーッとバラ撒く広告よりも注目度は高くなるように感じます。
デジタル広告の強みを活かせれば、個人や個店レベルできっと大きな収益増が見込めるでしょう。
いくつかのケーススタディーで具体的に考えてみましょう
僕は大小さまざまな企業や自治体の、TVCMからデジタル広告、店頭まで全ての広告に携わるクリエイティブディレクターです。自分の仕事にデジタルを採り入れたのは日本でもかなり早かった方だと思います。デジタル広告にはいろんな強みがあるものの、大企業と言えどそれを活かしきっているところは非常に少ないです。進化や変化が起き続けていて、理論先行で現場が付いていけないのです。ただ、僕は現場出身のクリエイティブディレクターですから、なんとかかんとかカタチにし、さらに自分流のデジタル広告テクを開発することで、商品やサービスの売上げを急増させることができるようになりました。
この連載シリーズでは、自分流のデジタル広告テクを、中小企業、自営業、個店、などが応用するとどうなるか、それを書いてみようと思います。
デジタル広告の精度が高い理由
皆さんが普段利用されているSNS、これは「プラットフォーム」と呼ばれます。プラットフォームとは、多くの人が集まる場所を指しますが、集まること自体に大きな意味があります。つまり、集まってそこで会話をすることそのものが、プラットフォーム主催者にさまざまなデータを提供することになるからです。プラットフォームは、そのデータを元に広告を出し分けられるメディアとして価値を高め、基本的にはそこで収益を得ます。たとえばFacebookやInstagramは実名制(Facebookはもともと実際のプロフィールを公開することを参加資格としていて、Instagramもその精神を受け継いでいるという意味です。それがゆえにターゲティング精度も高いです。まあ、最近は当たり前のように匿名でFacebookやる人もいますが・・・)なので誰がどこに勤めていて、どんな趣味嗜好を持っているかまでもわかります。そのプロフィールのデータを元に広告を出し分けられますし、Twitterは会話に出てきたキーワードをデータとして広告を出し分けたりします(この個人データをどこまで使うことが許されるのかという線引きが国際的に揺れていますけども)。
SNSは本来、個人に向けて解放されたメディアなので、そこで配信される広告も個人レベルでできるような配慮がされています。操作画面ができる限りやさしくわかりやすくできているということです。ところが実際に利用している広告主のほとんどは大企業、通販企業、IT系。こんなもったいない話もありません。せっかくSNSを使っているのなら、個人業の広告にも使ってみてはどうでしょうか。
デジタル広告には「コツ」があります。もし僕流のコツでおやりになれば(たぶんですけど)低予算で成果が得られるのではないかと思っています。
明日公開の#2では、デジタル広告の具体的な運用法をケーキ屋さんを想定して紹介します。もし港区のケーキ屋さんが月5000円の予算でInstagram広告を始めたら?という設定で書きますが、もちろん居酒屋さんでもちょっとやり方を変えれば通用しますし、いろんなお店で応用できると思います。
さらにその次は、行政書士や会計士などのいわゆる士業が新規顧客獲得するには、とか、下町ロケット的な工場が元請け客を探してアプローチするには、などの応用編的なものを採り上げてみようと思います。
今日から5日連続で配信します。明日以降もどうぞお楽しみに。
#1 デジタル広告、あなたもやらなきゃもったいない
5月20日(月)、朝6時公開
#2 ケーキ屋さんがデジタル広告を始めるなら【Instagram広告編】
5月21日(火)、朝6時公開
#3 昨対150%を達成する、小霜流デジタル広告のやり方
5月22日(水)、朝6時公開
#4 士業がデジタル広告で仕事を見つけるには【リスティング/アドネットワーク編】
5月23日(木)、朝6時公開
#5 町工場がデジタル広告で元請けを探すなら【Facebook広告応用編】
5月24日(金)、朝6時公開
<プロフィール>
こしも・かずや クリエイティブディレクター、コピーライター。86年、東京大学法学部卒業、同年コピーライターとして博報堂入社。98年退社。現在、ノープロブレム合同会社、株式会社小霜オフィス代表。「プレイステーション」や「一番搾り」、「ドラゴンクエストX」、「VAIO」など多くの広告に携わる。マス・Web広告統合の先駆を務める。広告賞受賞多数。著書に「急いでデジタルクリエイティブの本当の話をします。」「ここらで広告コピーの本当の話をします。」などがある。
担当編集・平川透、グラフィック制作・影山明日香
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