創業270年の白鶴酒造、「まる」だけではないその強み

新ブランドにはクラウドファンディング利用

 国内の酒造会社で売上高トップの白鶴酒造は、創業270年以上の老舗企業だ。売上高の約7割を占める大衆向けの「まる」のほか、華やかな香りを持つ「大吟醸」、リキュール、酒かす由来の化粧品など幅広く商品を展開。2001年に就任した嘉納健二社長は「流通の仕組みや消費者の関心の移り変わりに対応していく必要がある」と挑戦を続ける。

 嘉納社長が11代目として就任した01年は、日本酒の卸先が地域の酒販店から、スーパーなど小売店に変化しつつあった。「どうすれば店頭で商品の特徴を分かりやすくし、手に取ってもらえるか戦略に苦心した」と振り返る。

 その頃波に乗ったのが、紙パックの日本酒「まる」。従来の大瓶から手軽に購入できる中容量に変え、消費者向けにヒットした。一方「パック化することで、日本酒の格式高さが犠牲になるとの批判も受けた」という。

 その中、「当社の強みは、発酵にまつわる知見を生かした商品開発力」と自負する。創業以来、蔵人の五感を使って発酵で生まれる味わいの要素を引き出し、品質の向上につなげてきた。従来は冬季など酒造りの季節に雇用していた「杜氏(とうじ)」も、現在は正社員から生え抜きで工場長として酒蔵を率い、若手への技術継承に取り組む。

 商品開発には、若手の発想を取り入れたプロジェクトも始動。6月に発売する新ブランド「別鶴(べっかく)」は、若手社員が開発から醸造まで手がける。独自で開発した酵母から個性的な香味を持つものを選定し、さわやかな酸味などが特徴の日本酒を製造。クラウドファンディングで若年層向けなどから資金を募った。

 近年はソーシャルメディアの普及を受け、消費者の購買行動が変わってきた。嘉納社長は「個別に情報を得て購買に結びつく傾向があり、日本酒への関心が細分化されてきている」と見ている。

 ファンを取り込むために「同業者と協力し、日本酒の価値を理解してもらえる土俵づくりが重要だ」と強調する。同社は青森県と愛媛県の酒造会社を子会社化しており「多様な地域のこだわりを紹介できる企業に成長したい」と意気込む。

 また白鶴酒造を含む、兵庫県で古くから酒造りが盛んな「灘五郷」は地理的表示(GI)に指定されている。国内のほか海外への販売網拡充も、ブランド価値を多様な客層に発信できる機会となる。
(取材・中野恵美子)

日刊工業新聞5月13日(中小・ベンチャー)

  

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