市場シェアは約5割、月桂冠の「糖質ゼロ」が追求するモノ

秦洋二常務総合研究所長に聞いた

 月桂冠(京都市伏見区、大倉治彦社長、075・623・2001)の、糖質を極限までカットした日本酒「糖質ゼロ」が9月に発売10周年を迎えた。それを記念し、酒質をすっきりクリアな超辛口に、容器のデザインも刷新した同商品を、8月に発売した。同社は「糖質オフ・ゼロ日本酒」市場で約5割のシェアを握る。常務の秦洋二総合研究所長に開発戦略を聞いた。

 ―2008年に日本酒では初めて、100ミリリットル当たり糖質0・5グラム未満の「糖質ゼロ」を商品化してから10年目です。
 「会社にとっても『よくもった』という感想でしょう。08年に市場投入した直後は、上司から味のダメだしをよくされた。くやしさもバネにして毎年毎年、味の改良を重ねて来た」

 ―ターゲット層はどこに置いていますか。
 「この商品の入り口は二つ。今まで日本酒に縁遠かった人。そして本来お酒が好きだが自分の健康状態に鑑み、糖質が少ない酒を飲みたい人だ」

 ―味に気を付けていることは。
 「普通の日本酒の味に近づけるよりも、最初は違和感があるが、日常酒として“飲み飽きない味”が重要だ」

 ―あえて普通の日本酒に似させ過ぎない、ということですね。
 「糖質をカットすれば、本来の日本酒とは味が異なる。そもそも普通の日本酒を好む人は『糖質ゼロ』に手を伸ばさない。食事の脇役として、料理のうまみを広げ、余韻を楽しめ、かつ体に良い日本酒を目指している」

 ―製法で苦労したことは。
 「原料の米に含まれる糖分をしっかり食べてくれる酵母の育種が大事。また温度やもろみの撹拌(かくはん)具合といった、酵母のいる環境の適切な管理も必要だ」

 ―これからの製品開発は。
 「現在の酒類の開発動向は、糖分やプリン体など、分かりやすい成分を減らす流れだ。一方で、“酔いが残る”であったり、“飲むと酒臭くなる”など酒を敬遠する、目には見えない要素を克服する研究を行っている。日本酒が復権している中、悪いイメージを払しょくして、楽しんでほしい」

月桂冠常務総合研究所長・秦洋二氏

チェックポイント/超高齢社会対応、機能性に着目


 既存の日本酒にそっくり似せるのではなく、「糖質ゼロ」らしい味を追求した。日本酒を飲まない・飲めない人を取り込み、新しい日本酒愛飲者を生み出した。国内は人口減少もさることながら、超高齢社会に対応する製品開発がますます重要になっている。体に優しい日本酒をつくり出し、縮小する国内市場に新風を吹き込んだ。今後も日本酒の発酵食品としての機能性を高め「百薬の長」と呼ばれるのにふさわしい製品開発を進める。
(聞き手・日下宗大)

日刊工業新聞2018年10月16日

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。