ロボは外食産業の救世主、人件費高騰も「バイトテロ」も解決!?

ベンチャーのロボット開発加速、接客もお手の物?

 ロボットベンチャーによる外食業界向けロボットシステムの開発が相次いでいる。コネクテッドロボティクス(東京都小金井市)は、ハンバーガー焼きロボットなどを製作、QBITロボティクス(同千代田区)もロボット喫茶システムの試作機を完成、本格展開の道を探り始めた。ニチワ電機(兵庫県三田市)はリンガーハット開発(福岡市博多区)と共同で、中華料理店向けの麺調理システムを開発した。人手不足と人件費上昇の重圧に悩む外食業界にとって、ロボットが救世主になる可能性が高まっている。

人件費上昇・値上げ困難・バイトテロ… 自動化のメリット大きく


コネクテッドロボのハンバーガー焼きロボット。コテでパティをうまく裏返せる

 コネクテッドロボのハンバーガー焼きロボットは調理機械メーカー、タニコー(東京都品川区)との共同開発。ロボットが冷蔵庫から器用にミートパティやタマネギなどの材料を取り出し、鉄板に乗せて焼く。一定時間が過ぎたらミートパティをコテで裏返し、反対側を焼く仕組みだ。

 コネクテッドロボはこのロボとは別に、たこ焼きチェーン大手ホットランドのたこ焼きロボシステムも開発している。裏返すタイミングや返す技のテクニックに、過去のノウハウが生きる。

 食器洗浄ロボもまた、業務用厨房(ちゅうぼう)機器大手ホシザキとの共同開発だ。油やソースなどで汚れた食事後の皿をロボットが1枚ずつとって湯槽に漬け、付着した汚れを落としやすくする。その上でホシザキの食器洗浄機へ送り込み、洗浄が終わった皿を枚数をまとめ、搬送ワゴンに収納する。食器洗浄は外食店の仕事の中でも重たい物を扱う「3K」分野だけに、ロボシステムで省人化できればメリットは大きい。
コネクテッドロボがホシザキと共同開発中の食器洗浄ロボシステム

 外食業界やコンビニエンスストア業界は、人手不足による人件費上昇の影響が著しい。鳥貴族やすかいらーくホールディングス、吉野家ホールディングス、サイゼリヤなどの大手が軒並み、業績予想を下方修正、もしくは赤字転落に見舞われている。

 人手不足で人件費上昇の圧力が高まる一方、ライバル企業との価格競争や客離れのおそれもあるため、値上げなどメニュー価格の変更はしにくい。値上げを実施できるのはごく一部の“価格競争から脱することができた”チェーンにすぎない。

 「バイトテロ」の心配もある。店の厨房で不衛生な行動をしたり、悪ふざけをしたりする投稿動画がネット上で拡散し、店側が謝罪や閉店に追い込まれるケースが相次いでいる。「大戸屋」では全店を急きょ1日休業し、バイト社員に対する研修教育を実施した。人件費と別に、こうした教育コストの上昇も外食などサービス産業に、影響を及ぼしている。

 ロボットはこのどちらの問題も、解決できる。調理を自動化すればその分の人件費が浮き、バイトテロや異物混入、食品衛生管理などの対策にもなる。これまで業界へのロボ導入を阻んできたのは人件費の安さに加え、画像処理や認識などのロボ技術が十分に追いついていないことだったが、障害は確実に低くなりつつある。

エンジニアリング企業活躍 「変なカフェ」経験生かす


 QBITロボティクスは若者が集まる街、東京・渋谷でロボットがコーヒーをいれる「変なカフェ」を手がけた。その時に得た教訓は、コーヒーマシンに豆を供給したり、人間がロボットを清掃したりする際「ロボの設置場所がずれて後でコーヒーをうまく注げなくなる」(狩野昌央会長)というものだった。

 この経験を生かし、ロボ喫茶システムではロボットを円形テーブルの中央に固定。ロボの周囲にコーヒーマシンやアイスコーヒーマシン、ドリンクマシンなどを一定間隔で配置するスタイルにした。これだとロボの位置がずれる心配がなく、それぞれのマシンとの距離や作業手順などをロボに入力すればよいので、誤作動なく作業を続けられる。

 コネクテッドロボのハンバーガー焼きロボットやたこ焼きロボットにしても、寸法がわずかに狂うことで肉をうまくはさめなかったり、たこ焼きを裏返す作業に失敗したりなどすれば、現場で使いものにならない。

 それを克服するのがエンジニアリングやアルゴリズムの処理技術の腕であり、ロボメーカーよりもロボエンジニアリング企業が活躍するゆえんでもある。たこ焼きやコーヒーマシンの細かい数値設定などは大手では小回りが利かない分、難しく、個別対応できるロボベンチャーの独壇場だ。
ロボを中央に固定し、周囲にコーヒーマシンを配置するスタイル

AIや画像認識を接客に応用


 現時点で外食向けに開発されたシステムは、人手不足の現場を補うものが大半だ。調理場の作業の一部をロボットに任せることで人間はそれとは別の、接客やバイト指導などの業務に集中できる。単純な調理作業はロボットで、お客さんの笑顔を引き出す接客はベテランの店員スタッフというのが分業の図式だったが、人工知能(AI)や画像認識技術の発達がその常識も変える可能性が出てきた。

 QBITロボティクスが開発中の次世代カフェロボットシステムは4台のカメラで行き交う人々の顔を1人ずつ認識し、興味のありそうな客に対しては「いかがですか?」と呼び止めたり、コーヒーを何度も注文してくれる客へは「ありがとうございます。私の懐も助かります」などと“冗談トーク”で笑わせたりできる技術の研究を進めている。

 ロボットが外食産業で働く人間に迫る日も、そう遠くはないのかも知れない。
(文=編集委員・嶋田歩)
画像認識カメラとAIで個人の顔表情を識別、接客サービスに生かす(QBITロボ)

日刊工業新聞2019年5月3日

  

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