ソフトバンク躍動も…大型M&A相次ぐ平成の波乱を振り返る

グローバル化に直面

 平成の30年間、企業はその字面とは異なる起伏の激しい道を乗り越えてきた。大型M&A(合併・買収)も相次ぎ、各業界をけん引する顔ぶれも大きく変わった。世界規模での厳しい競争を勝ち抜くには今後も合従連衡は避けては通れない。新時代「令和」を迎える銀行、鉄鋼、電機、通信、製薬の各業界の変遷をたどる。

銀行/3メガ銀が確立 「バブル」「リーマン」耐える


 大手都市銀行は1990年代のバブル崩壊に伴う不良債権問題が経営を直撃し、生き残りをかけた合併劇が展開された。03年頃には三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの現メガバンク体制の原型が完成。他の大手行を含めた大規模再編が落ち着いたかに見えた08年にはリーマン・ショックに襲われるなど、平成の時代は波乱の連続だった。

 13年3月に就任した日銀の黒田東彦総裁はバブルの後遺症とも言えるデフレ脱却に向け異次元緩和を打ち出し、マイナス金利などの金融緩和策を相次いで導入。その結果もたらされた超低金利環境が各行の体力をむしばみ、国内事業では預貸金利ざやで稼ぐビジネスモデルの限界が顕在化した。

 銀行界は収益体質の改善など抜本的な構造改革を余儀なくされている。変革の突破口と期待されるのが、フィンテック(金融とITの融合)などデジタル化戦略だ。各行は自前主義からの脱却を旗印に掲げ、キャッシュレス決済やブロックチェーン(分散型台帳)技術などの開発を加速。決済サービスめぐっては通信やIT企業といった異業種との競合が激化しているだけに、勝ち筋をいかに見いだせるかが注目される。

 振り返ればこの30年で幾多のパラダイムシフトを経験してきた銀行界。メガバンクは次の時代をどう生き抜くのか。業界の旗手の一挙手一投足から目が離せない。

鉄鋼/「日本製鉄」発足 国内再編、世界に挑む


 鉄鋼業界再編の引き金は“ゴーン・ショック”だった。カルロス・ゴーン最高執行責任者(COO、当時)が主導する日産自動車再建策の一環として、同社が1999年から鋼材調達先の選別を進めたことで、鋼材の激しい値崩れが起きた。

 鉄鋼各社が深刻な打撃を受ける中で、川崎製鉄とNKKが02年に経営統合し、03年には鉄鋼事業の統合新会社、JFEスチールが発足。八幡製鉄と富士製鉄の合併で新日本製鉄が70年に誕生して以来30年余り続いた新日鉄、川鉄、NKK、神戸製鋼所、住友金属工業、日新製鋼(現日鉄日新製鋼)の大手6社体制が幕を下ろした。

 鉄鋼業界を揺るがしたゴーン・ショックだが、JFEスチールを傘下に置くJFEホールディングスの柿木厚司社長は「内需の状況や海外勢との競争を考えれば、合従連衡はどのみち避けられなかった」と振り返る。

握手する宗岡新日鉄社長(左)と友野住友金属工業社長(2011年2月=役職は当時)

 これを裏付けるように、新日鉄と住友金属が12年に合併し、粗鋼生産量で当時世界2位の新日鉄住金が誕生した。人口減少に伴う内需の先細りをにらみ、規模拡大をテコに世界展開を加速する狙いだ。新日鉄住金からの社名変更によって4月1日に発足した日本製鉄の進藤孝生会長は、業界再編について「高度経済成長期が終わって成熟期に入り、国際化も進む中で起きるべくして起きた」と指摘する。

 海外勢も規模拡大に向けてM&Aを精力的に進めており、17年の最新データによると新日鉄住金の粗鋼生産量は、中国企業に抜かれて3位に後退した。中国では「鉄鋼強国」を掲げる政府の主導で国営鉄鋼企業の再編が進む。日本の鉄鋼各社も海外案件を軸にM&Aの原資を積み増し、対抗姿勢を強めている。

電機/シャープ、鴻海傘下に “電機王国”落日の時代


 平成時代は、電機王国が落日した30年だった。家電や半導体で世界をけん引する立場から、追う立場、買われる立場に変わった。2000年代初頭に日本の製造業が円高で苦しむ中、ソニー、シャープ、三洋電機は好業績をたたき出し、「3S」ともてはやされた。そのうち、2社がM&Aの対象になったのは皮肉だ。

 「亀山ブランド」の液晶パネルで世界をけん引したシャープは工場への巨額投資が負担になり、最終的に台湾の鴻海精密工業の傘下に入った。三洋電機は11年4月にパナソニックの完全子会社となった。

 ソニーは足元の業績は過去最高水準にあるが、収益源を家電からゲームや半導体に大きく変えた。不採算事業を切り離し、パソコン事業も売却した。

 日立製作所の動きも目立つ。02年に20億5000万ドルを投じ、米IBMのHDD事業を買収。「小が大を呑(の)む」買収だったが、赤字体質で業績の重荷になり、11年に米ウェスタン・デジタルに売却した。18年にはスイスのABBから送配電などの電力システム事業の買収を決めた。買収額は7000億円以上で日立のM&Aでは過去最大になった。こちらも小が大を呑む買収なだけに、グローバル企業を標榜(ひょうぼう)する日立のマネジメント力が問われそうだ。

鴻海傘下となったシャープの亀山工場

通信/ソフトバンク躍動 携帯3社“繁栄”、収益大幅増


 2000年10月、第二電電(DDI)と国際通信電話(KDD)、日本移動通信(IDO)の3社が合併し、KDDIが誕生した。ソフトバンクは06年に英ボーダフォン日本法人の買収を機に携帯事業へ参入。携帯電話やスマートフォンが生活に欠かせなくなった平成時代にKDDI、ソフトバンクは、業界首位のNTTドコモとともに収益を大きく伸ばした。

 令和元年の19年には10月に楽天が第4の携帯電話会社として参入する。20年春には第5世代通信(5G)が始まるなど通信業界も新たな時代を迎え、新サービスが続々と生まれるはずだ。

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長はパソコン、インターネット、ブロードバンド、スマホと「約10年に1回、パラダイムシフト(価値観の転換)が起きた」と指摘した上で「今、人工知能(AI)革命という最も大きなパラダイムシフトが出現している」と話す。

 IoT(モノのインターネット)時代も本格化する中、ビッグデータ(大量データ)を解析するAIがすべての産業を再定義する日も令和時代にやってきそうだ。

製薬/武田、6兆円買収 規模の恩恵、創薬研究を加速


 総額約6兆2000億円―。平成最後の年となった2019年1月、武田薬品工業はアイルランド製薬大手シャイアーの買収を完了した。日本企業による海外企業の買収案件では過去最高額となり、世界トップ10に入る製薬企業が生まれた。

 巨額買収の背景の一つには、製薬企業の新薬開発費が増加する一方だと考えられていることがある。「開発品のタイミングを(既存製品の)特許切れに合わせることも容易ではない」(クリストフ・ウェバー武田薬品社長)。企業規模の拡大によって研究開発費や開発品を確保することで、その間に将来を見据えた創薬研究を進める戦略は一定の合理性がありそうだ。

 平成は国内勢同士の合従連衡が相次いだ時期がある。山之内製薬と藤沢薬品工業が合併してアステラス製薬が05年に発足した。

 三共と第一製薬が統合した第一三共は07年に営業を始めた。だが近年、国内主要製薬企業同士の全面的な合併は起きていない。「企業規模が大きくなることの優位性がなかなか見えない」(内藤晴夫エーザイ最高経営責任者)など、大型M&Aは必ずしも研究開発効率向上につながらないとの意見もある。
 
 各社とも変化し続ける事業環境を見定め、世界で存在感を高めるためのビジョンが問われる。

日刊工業新聞2019年4月29日

  

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