総合病院を飛び出した“がんの町医者”、がんと生きる4か条

高良毅氏に聞く。患者の身体は医療で治し、心は仏心で癒す

 ―医師を志した理由は。
 「幼少の頃は『鉄腕アトム』が好きで、将来は科学者になるのが夢だった。だが、小学校に上がる前、私をかわいがってくれた伯父が胃がんになり、手術室で手術を見せてもらったことがある。手術後に看護師が整理していたがんの摘出標本を見て、たった1センチ―2センチメートルの小さながんに、伯父の命は奪われようとしているのかと衝撃を受けた。伯父は痩せて数カ月後に亡くなってしまい、子供心に『私なら絶対に治せる』と感じて医者になる決意をした」

 ―がん専門のクリニックを開業した動機を教えてください。
 「以前は総合病院で消化器外科医として胃がん、大腸がん、食道がん、膵臓(すいぞう)がん、肝臓がんなどの手術を行ってきた。ある程度の病気であれば手術で患部を切り取りメスの力で直せるという自信があったが、一定の時期を逸せば抗がん剤治療しかない。そのころ、がんの3大治療は『手術』『放射線療法』『化学療法』と教え込まれてきたが、実際に抗がん剤を使用しても助からない患者もいて、その度に無力感を感じていた。このままの医療では進行がん患者の命を救うことはできないと思い、総合病院を退職した。新たな医療の道を見つけようと、がん専門のクリニックを2002年に東京・五反田で開業した。組織の中にいてはできない自由診療を行っている」

 ―どのような治療を行っていますか。
 「西洋医学に東洋医学を取り入れた統合医療『TCTP(総合的がん治療プロトコル)』に則した治療をしている。主な治療は、免疫治療(樹状細胞治療・T細胞・NK細胞)、遺伝子治療、放射線治療、がんワクチン療法、補完支持治療として、温熱療法、放射線ホルミシス療法、高濃度ビタミンCなどの点滴療法などだ。検査結果や病状を伺った上で、患者に合った治療法を選択して組み合わせていく」

 ―現在、男女ともにおよそ2人に1人ががんを発症するリスクがあると言われています。本書では予防医学を重視しています。
 「がんを予防し、再発を防ぐために、自分の体は自分で守るセルフディフェンスという考え方が重要だ。そこで私は、『タカラクリニック4か条』と題して(1)身体を温める(2)太陽にあたる(3)深呼吸をする(4)感謝の心・くよくよしない、を提唱している。一昔前のように『がんイコール死病』という時代ではなくなってきている。いつまでも健康で元気に過ごせるよう、がん細胞が住みにくい体内環境をつくることが大切だ」

 ―クリニックの院長として多くのがん患者の治療にあたる傍ら、真言宗の僧侶となりました。
 「病気の平癒を祈願する、という思想は医療につながるものと思う。がんになったときこそ思考の転換が大切だ。『私、これからどうなりますか』と落ち込むのではなく、『どうなりたいか』という意識が大切だ。意識次第で自分の免疫力を上げることができる。患者の身体は医療で治し、心は仏心で癒せるよう心がけている」

(聞き手=山下絵梨)

◇高良毅(たから・つよし)氏 医療法人社団盛心会タカラクリニック院長

85年(昭60)聖マリアンナ医科大卒、同年同大病院第一外科入局。91年カナダ・ケベック州マギル大付属モントリオール小児病院で肝臓および小腸移植の研究に従事。95年帰国後、労働福祉事業団(現労働者健康安全機構)東京労災病院外科入局。02年メディカルクリニックを開業。03年医療法人社団盛心会を設立。沖縄県出身、59歳。

『がんの町医者』(ルネッサンス・アイ 03・6657・8575)

日刊工業新聞2019年1月28日掲載

  

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