「GAFA」も虎視眈々、医療データ争奪戦の裏に…

接続する端末の数が増加、セキュリティー上の脅威は一段と

 ウエアラブル端末を用いて取得した患者のバイタルデータを医療に役立てようとする動きが活発だ。メーカーやベンチャーが相次ぎ参入し、腕時計型や衣料型など多様な形状の端末を使って、これまで活用しきれなかった患者の日常生活のデータを分析し、病気の予防や進行の抑制につなげる。だが個人データの不適切な利用への懸念などから日本での活用は発展途上の段階。課題をクリアし、進行する高齢化社会に対応する新たな医療産業の創出が期待される。

 日本人の疾患割合で高いのは老化に伴うがんや生活習慣に関わる糖尿病、高血圧、認知症などだ。治療も病気の根治ではなく、進行抑制や予防になる。そのため治療する場は病院から生活の場へと広がり、患者の行動変容を促したりすることで治療成果を上げる方向にシフトしている。そのツールとしてコンシューマー向けと異なるウエアラブルの活用が進んでいる。

 例えば、糖尿病ではテルモが腹部に貼り付けたセンサーからグルコース濃度の変動を確認し、患者の血糖管理をサポートする仕組みを提供。認知症はTDKが大分大学とリストバンドを使った徘徊(はいかい)検知システムを検証し、有用なデータを得たことから介護施設への提案を進める。

 だが、日常生活のデータが医療に役立つという事例は少なく、医師も使いあぐねている状態。そのため、国は企業と医療機関などで協力体制をつくり、エビデンス(根拠)の構築に向けた取り組みを始めることにした。医師が診療の参考に使えるように「データの立ち位置を高める」(経済産業省)考えだ。

 一方、巨大IT企業の“GAFA”も市場拡大をにらみ、提携戦略を加速する。米アップルは股関節や膝関節の置換手術で医療機器の米ジンマーバイオメットと、米グーグルは糖尿病治療でインスリン技術を持つ仏サノフィと提携。患者の術後改善や商用モデルに向けたデータ活用に取り組んでいる。

 米調査会社、フロスト&サリバンのヘルスケア部門ディレクター、ソウムヤ・ラジャゴパラン氏は「今後、医療系企業がウエアラブルで集めた臨床現場のデータを製品開発や新しい治療法の確立に活用することが見込まれ、GAFAは医療データの提供や分析で主要な役割を果たすだろう」と予測する。

 ヘルスケアのIoT(モノのインターネット)化は、患者を中心とした医療の現場へと変革をもたらす可能性がある。だが、裏腹に接続する端末の数が増加し、セキュリティー上の脅威は一段と高まる。患者のプライバシーを危険にさらすことなく、安全に活用できる環境の整備が欠かせない。
(文=清水耕一郎)

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日刊工業新聞2019年3月14日

  

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