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売り上げが目標の2倍に。ある「いぼ痔治療薬」の販売法

小林製薬の「ヘモリンド舌下錠」
 小林製薬は2017年10月、いぼ痔治療薬「ヘモリンド舌下錠」を発売した。扶桑薬品工業からヘモリンドの販売権を取得。パッケージなどをリニューアルし、痔治療薬分野に参入した。同社は新たな事業領域への挑戦を全社で進めており、ヘモリンドの発売はその一環。ヘモリンドで初年度は3億8000万円の売り上げを目指していたが、その約2倍の売り上げを達成するなど好調に推移している。

 痔治療薬の特性について、「痔治療薬は季節指数がないので、年間で売れる」と、ヘリモンドのマーケティングに携わった林康雄ヘルスケア事業部マーケティング部オーラルケアグループ長は話す。日本肛門大腸肛門病学会の疾患治療ガイドラインによると痔のなかで、いぼ痔の患者数が最も多い。いぼ痔は便秘による排便時のいきみや、長時間座ったままで肛門に負荷をかけることなどで発症する。患者には20代の女性が多いとも言われている。

 いぼ痔の治療は、外用薬を患部に塗布する方法が主流。同社が調査を進めた結果、外用薬の塗布が手や下着が汚れる、使用する場所が限定されるなどの指摘があった。

「年間で売れる」


 こうした流れのなかで、ヘモリンド舌下錠の販売を手がけることになった。ヘモリンド舌下錠は東菱薬品工業(東京都千代田区)が製造し、扶桑薬品工業が67年から販売していた治療薬。小林製薬が扶桑薬品工業から販売権を取得し、17年10月から新たな販売元になった。有効成分などは従来のヘモリンド舌下錠と変更しなかった一方で、パッケージや錠剤の容器のデザインなどをわかりやすく大胆に刷新した。

 またヘモリンドで採用する舌下錠は舌下で溶かし、口腔粘膜から有効成分を吸収。脊髄を通じて患部へと広げ、いぼ痔の内側からアプローチして根元から小さくしていく仕組み。通常の内服では肝臓を介するため成分が代謝されやすいが、脊髄を通るため代謝されにくいという。

伸びしろはある


 内服薬のヘモリンドは現在、主にドラッグストアで痔の外用薬の近隣に配置して販売している。「それにより相乗効果があり、うまく販売を伸ばせている」(林グループ長)という。売り上げは想定以上となった一方で、認知度は他社製品に比べるとまだまだ低いのが現状。治療薬としての認知率は特定の市販薬の57%に対し約14%にとどまると同社では見ている。それだけに「(成長の)伸びしろはあるのではないか」と林グループ長は期待を込める。ただ同社のニュースリリースのウェブビューで上位10本に入るなど、関心の高い製品となりつつある。

 いぼ痔は女性が多い疾患と言われており、ヘモリンドの販促活動におけるターゲットボリュームを20代女性と設定。その設定のもと、テレビCMなどを展開している。だが「男女両方に使ってもらいたい」(同)ため、男性に向けたPR活動にも取り組んでいく方針。ターゲット層に合わせたコミュニケーションで、痔治療薬市場を開拓していく。
(文=石宮由紀子)

       
日刊工業新聞2019年4月26日

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