経営統合を断念した東京エレクトロンが策定した中計の中身とは?

半導体製造装置に集中するも巨額投資に課題 「常にM&Aの可能性を検討していく」(東社長)

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13年に経営統合を決めた東哲郎東京エレクトロン社長とゲイリー・ディッカーソンアプライドマテリアルズCEO
 米アプライドマテリアルズとの経営統合計画が破談した東京エレクトロンが、単独での成長に向けた中期経営計画を策定した。各製品部門の連携強化や、顧客ごとに問題解決に当たる制度導入により、提案型企業へ脱皮を目指す。こうした取り組みはアプライドが得意としており、統合交渉の過程で同社の強さを学んだ“新生”東京エレクを印象付けた。一方、巨額化する研究開発投資にどう対応していくのか課題も残っている。

 【保守分野も拡充】
 東京エレクの中計は、半導体製造装置事業(SPE)に集中するのが基本方針。保守サービスを現在の1700億円から2000億円に伸ばす計画も示した。2020年3月期までに売上高を9000億円(16年3月期予想比33・3%増)、営業利益を2250億円(同2倍)に引き上げる。

 半導体業界では、製品性能を左右する回路線幅が10ナノメートル(ナノは10億分の1)を切るような先端技術の開発が進む。一方、モノのインターネット(IoT)の普及を背景に、「多様化への対応も不可欠」と東哲郎東京エレク社長は強調する。

 その対応で打ち出したのが「顧客ニーズ創造型企業」(東社長)への移行だ。具体的には、それぞれ独立心が強かった各装置部門に横串を刺してノウハウを融合させることで、先端技術への対応力を高めるプロジェクトを始めたほか、また顧客ごとに総合的な問題解決に当たる「アカウント・リージョン制」を導入した。

 河合利樹副社長は、「従来、当社はマーケットイン指向で、顧客ニーズに着実に応えることは強かった。これからは、当社からマーケットに提案していく」と強調する。

 【統合作業で刺激】
 東京エレクは、アプライドとの経営統合計画を13年9月に発表したが、各国の競争当局の許可が下りず4月に破談した。その間、約1年半。統合作業を通じて「アプライドの利益を追求する姿勢や、グローバル展開のスピード、効率の良さなどに刺激を受けた」と東社長は語った。

 先行してアプライドは、顧客ニーズに総合的に対応する「アプライドグローバルサービス(AGS)」を展開しており、東京エレクは今回の中計策定で参考にしたはず。今後はアプライドから学んだ強さを、成長に結びつけていけるかに市場の視線が注がれる。

 一方、研究開発費計画には不透明感が残った。アプライドとの経営統合計画を発表した際、東社長はその理由として「巨額化する研究開発費の負担を軽減するため」と説明した。

 【常にM&A模索】
 今回公表した、20年3月期の研究開発費計画は16年3月期比7・4―20・8%増の800億―900億円に留まる。「SPEに集中して投資する」(河合副社長)とともに、「常にM&A(合併・買収)の可能性を検討していく」(東社長)との方針を示した。
 (文=後藤信之)

日刊工業新聞2015年07月14日 電機・電子部品・情報・通信

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

大勝負に出たアプライドとの経営統合が破談になり、戦略にやや手詰まり感がある。東社長のことなら、「これをチャンス」と発想の転換ができると思うが。

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