香港ビジネスパーソンの離職率を抑える、もっとも重要なこととは?

 香港のビジネスパーソンたちは「小銭を支出することを躊躇(ちゅうちょ)していては、大きな幸せは巡ってこない」とよく口にする。これに関連し、香港の企業では高い頻度で社員向けのイベントを行う文化がある。例えば、アジアの伝統的な行事である中秋節には月餅を配り、正月にはお年玉も支給する。他にも、社員の誕生日祝いや、業績達成を祝う会など例を挙げればきりがないほどだ。「なぜそんなに時間とコストをかけて、社内イベントを開く必要があるのか?」と思う方もいるかもしれないが、香港では全体的に離職率が高いことから、会社が社員を必要としている姿勢を見せることを目的としている。

 香港人が会社を辞めるきっかけの大きな理由の一つは「自分はこの会社にいる必要はない」と思った時だ。彼らは日本人以上にウェットな性格で、人間関係を重視する側面がある。そのため、会社は「社員が必要」と伝えることが香港での企業経営において重要なのだ。特に優秀な社員に対しては、会社が必要なことを強調し、特別扱いすることも大切だ。

 在香港の日系企業の方々とこの課題について話をすると「会社の業績が悪いのにコストばかりかかる」「香港は離職率が高いから、研修や引き留め予防のために高いコストや時間をかけたくない」という声も聞く。だが、この考えにより、せっかく採用した優秀な人材も、期待していた活躍をする間もなく離職してしまうことにもなりかねない。一方、在香港の欧米企業では優秀な社員に本国の本社で研修を受けさせるなど特別扱いしている。他の社員もその光景を見て、自分もそうなりたいと思わせてモチベーションを高める効果も期待する。

 私はJAC香港法人の設立と同時に赴任して7年が経つが、当初はこの文化を理解しておらずコストを最小限に抑えながら業績と利益を上げることに専念した。社員を褒めることを怠り、社内イベントもしなかったため社内の雰囲気が悪化し、入社後半年以内の社員の離職率が40%を超えたこともあった。

 日本では、仕事を合理化し生産性を高めることに加え、コスト削減も求められる。主張があれば、その前に結果を出すべきだという考え方もあるが、それは日本特有の文化であり、海外ではそのような考えや価値観は通用しないことを理解し、教訓にもなった。

 繰り返しになるが、香港では社員に「あなたを必要としている」という意思を伝えることが最も重要だ。その方法として社内イベントの開催や、明確な評価制度を導入し、優秀な社員を特別扱いすること。これを念頭に置くことで優秀な香港人が活躍し、ビジネスを成長させることができるだろう。(随時掲載)

◇JACリクルートメント香港法人社長 蓮子哲也(はつし・てつや)氏

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