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月桂冠の新商品「THE SHOT」目・鼻・口に訴える瓶形

 「カップ酒」と聞いて思い浮かぶのが、それを片手に清酒をグビッと飲む“おじさん”。しかし、国内人口が減少する中、清酒市場の維持・拡大には40代前後の年齢層にどう訴求できるかがカギを握る。月桂冠(京都市伏見区、大倉治彦社長、075・623・2001)は従来のカップ酒のイメージを覆す、新しい瓶形の「THE SHOT」シリーズを3月末に発売した。立ち上げに関わった営業推進部の伊藤慎也氏にデザイン戦略を聞いた。(京都・日下宗大)

 ―瓶形がカップ酒と全く違います。
 「女性でも飲みきりサイズの清酒をためらうことなく購入できるような、従来のイメージをがらっと変えるデザインにしたかった。今回のシリーズは2種類の清酒のフルーティーな香りも特徴。瓶上部も工夫し、香りをためやすい形状にして、風味を十分楽しめるようにした。目と鼻と口に訴えるデザインだ」

 ―今回は瓶ですが、アルミニウム缶も検討しなかったのですか。
 「企画段階では候補に挙がっていた。しかし消費者にとって清酒のイメージは高級感のある特別な酒。今回、多くの刷新を図ったが、そのイメージは大事にしたかった。瓶だと中身が見える。さらに手に取れば“程よい重々しさ”もある」

 ―清酒業界全体でもブランドの刷新を狙った新しい製品デザインが増えています。
 「どの消費者を対象にするかによって瓶形やラベルの絵などは変わる。そこを突き詰めてデザインに落とし込む。最近の瓶形については一升瓶や四合瓶、カップ酒といった“業界内の形”から変わってきている」

 ―製品デザインで重視していることは。
 「もちろん、年代や性別など属性がそれぞれ違う消費者の動向に合わせることは重要だ。ただ全部それに寄りかかってはいけない。歴史ある月桂冠のアイデンティティーを打ち出していくことも忘れてはならない。その点は今回のシリーズにおいてもラベルデザインなどに込められている」
                   
日刊工業新聞2019年4月2日

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