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人員転換で大なたの富士通、SE出身の新社長が背負う“成長納期”

人員転換で大なたの富士通、SE出身の新社長が背負う“成長納期”

時田次期社長(右)と田中社長

 富士通は28日、田中達也社長(62)が代表権のない会長に就き、時田隆仁執行役員常務(56)が社長に昇格する人事を発表した。6月下旬の定時株主総会を経て正式決定する。4年ぶりの社長交代で若返りを図る。本家本流の金融業担当システムエンジニア(SE)出身の就任により、成長の軸に据えるテクノロジーソリューション部門の再強化に乗り出す。

 28日に都内で開いた会見で、時田次期社長は「私の持つ経験のすべてを持って、成長戦略を推し進める。それが私に求められる役割であり、この大役に全力で臨みたい」と抱負を語った。現体制の田中社長は営業出身、山本会長はパソコンなどハードウエア出身であり、SE出身のトップは黒川博昭氏以来11年ぶり。
【略歴】
時田隆仁(ときた・たかひと)氏 88年(昭63)東工大工卒、同年富士通入社。15年執行役員、19年執行役員常務。東京都出身。

時田氏の素顔とは?


 銀行や生命保険など金融分野を中心にSEとして大規模なシステム構築を数多くこなし、豪腕なプロジェクトマネジメントスタイルを磨いた。2017年からは世界8カ国でサービスデスクやオフショア開発を統括するグローバルデリバリーグループの指揮を執り、直近はロンドン駐在として、グローバル目線で社内外を見つめていた。

 理工系出身のSEのトップは富士通として初めて。話しぶりはいつも論理的で、冷静沈着な判断と、毅然(きぜん)とした実行力を兼ね備える。実直な人柄ゆえに社内外からの信頼も厚い。

 信条は変革への挑戦。趣味はゴルフ。「学生時から遊びとしてゴルフを始めたが、腕前はたいしたことない」と謙遜するが、「ロンドンでもコースを周り、より好きになった」と笑顔を見せる。妻と長男の3人家族。
(文・斉藤実)

日刊工業新聞2019年3月29日



人員シフト加速


 富士通は19日、2019年3月期に希望退職者の再就職支援などで461億円を営業費用に計上すると発表した。国内5000人規模の人員シフトに伴う構造改革に取り組んでおり、対象は間接・支援部門に所属する45歳以上の正規従業員と、定年後再雇用の従業員。1月末時点で2850人が希望退職に応募した。

 19年3月期は構造改革費用として、すでに欧州拠点の再編に436億円を投じており、今回の国内分を合わせると、合計897億円となる。

 また19年3月期は年金制度の変更に伴う一時利益900億円が手持ち資金として持っていたが、想定通りに国内外の構造改革でほぼ全額を充当する形となる。構造改革費用が一時利益などで実質的に相殺され、19年3月期の業績予想は据え置きとした。

日刊工業新聞2019年2月20日



営業利益率10%以上へ大なた


 富士通は経営改革で再び大なたを振るう。苦戦する海外向け業務用パソコンとサーバーの生産基地であるドイツ・アウクスブルク工場を2020年前半までに閉鎖する。国内でも経営のスリム化を進める。その一環として、執行役員の定義を「現行の執行役員常務以上」に変更し、代表取締役を除く役員数は現行の57人から24人に半減する。加えて間接部門にメスを入れ、約5000人を営業などに配置転換する。

 新経営体制ではソフト・サービスなどを中核とする「テクノロジーソリューション」部門をコア事業として経営資源を集中するとともに「自前主義をあらためる」(田中達也社長)。従来の全社目標だった「連結売上高利益率10%以上」を軌道修正し、新たにテクノロジーソリューションにおいて「2022年度営業利益率を現行比2・5倍の10%以上」を掲げ、全社が目指す指針とした。同事業の売上高のトップラインは3兆1500億円を目標に据える。

 パソコン、携帯電話、半導体などの利幅の薄いハード事業の切り出し(連結外し)は田中社長が就任以来、力を注ぐ経営改革の本丸。パソコン事業はすでに中国のレノボに売却済みであり、アウクスブルク拠点の閉鎖は既定路線となる。

日刊工業新聞2018年10月29日

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