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「高い」の声多かったレゴランド・ジャパンの今 これからが正念場

割引策が奏功、遊び方も認知されてきた
「高い」の声多かったレゴランド・ジャパンの今 これからが正念場

クリスマスイベント初日の開園前(昨年11月16日)

 名古屋市港区に2017年4月に開業したテーマパーク「レゴランド・ジャパン」。地域観光振興の起爆剤として大きな期待を受け華々しくオープンしたが、入場料が「割高」などと批判が続出、多難な船出となった。ただ、その後の矢継ぎ早に打ち出した割引策が功を奏し、年間入場者目標200万人の達成も見えてきた。4月には隣接してホテルや水族館を開く。一時しのぎの集客にとどめず、持続的な発展に欠かせない「リピーター」を得られるか。これからが正念場となる。

厳しい現実


 「楽しいが正直言って、高い」。河村たかし名古屋市長はレゴランド・ジャパンの出だしの苦戦ぶりを受け、こうこぼしていた。市の調査で全国主要8都市の中で観光地として「最も魅力に欠ける」という結果が出てしまった名古屋市。汚名返上に向け新たな地域観光の目玉として期待を寄せたのがレゴランドだった。

 ところが、ふたを開けると厳しい現実が待っていた。一つは入場料。一日券は大人6900円(消費税込み)、子ども(3―12歳)5300円(同)。その価格設定に対し「家族全員で行くにはチケットがあまりに高すぎる」などと批判の声が相次いだ。もう一つは、そもそものコンセプト。レゴランドは子ども客を重視し、客とスタッフが一緒に「触って、つくって、学んで楽しむ」ことをスタイルとする。日本のほかのテーマパークは「見て、食べて、アトラクションに乗って楽しむ」スタイルがメーンとされる。レゴランド・ジャパンのトーベン・イェンセン社長もレゴランドのスタイルは「日本ではまだなじみがない」と率直に述べる。実際、会員制交流サイト(SNS)では「つまらない」とコメントされることもあったという。レゴランドは月ごとの入場者数を公表していないが、オープン当初は苦戦したとみられている。

入場者100万人超


 そこでオープン1カ月後の5月には、さっそく入場料の割引策を打ち、テコ入れを急いだ。4人合計で最大6100円、3人合計で同4400円安くなる家族向けの割引き「ファミリー1DAYパスポート」を導入。その効果が表れ、9月には年間入場者目標の半分に当たる100万人を突破した。

 さらに10月には愛知県・岐阜県・三重県の在住者は一日券が大人で2400円、子どもで2000円安くなる「ホームタウン1DAYパスポート」も開始。イェンセン社長は「割引きを打ち出してから入場客の伸びが大きくなった」と強調する。

 独自のスタイルについても「子どもたちの『知育』の場として少しずつ認知されてきた」(イェンセン社長)。また広過ぎない、ほどよいサイズも好感が持たれているという。レゴランドの敷地面積は約9万3000平方メートル。東京ディズニーリゾート(TDR、約100万平方メートル)やユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、約54万平方メートル)とは比べるまでもない小ささだ。

 ただ、ターゲットとする子ども連れの家族にとっては「広すぎないから子どもがくたびれることなく、遊ばせやすい」といった評価も多い。小さいわりにアトラクションは約40とTDRやUSJに引けを取らない豊富さだ。そうしたことが広がり、幼稚園の遠足など団体客についても「秋頃から」(同社長)増えているという。

子連れ客がターゲット

ホテルと水族館


 2年目に入る4月。隣接して8階建てのホテル「レゴランド・ジャパン ホテル」と水族館「シーライフ ナゴヤ」を開業し、「レゴランド・ジャパン リゾート」へと進化する。

 複合型リゾート施設になることで「1日目はレゴランド、2日目は名古屋の市街地」という新たなルートを提案し、観光客を呼び込む。

 またホテル1階部分にレゴランド・ジャパンと隣接する商業施設「メイカーズ・ピア」に通じるトンネルを設け、エリア一体での発展も重視。近隣の国際展示場「ポートメッセなごや」の土地の一部を使った拡張計画も検討している。イェンセン社長は今後のさらなる仕掛けについて「サプライズはあるが、それはまだ秘密」と笑顔を見せる。

 年間入場者200万人を射程圏内に入れ、ようやく軌道に乗り始めたレゴランド。ただ真に重要なのは200万人という数値自体ではなく、その中身だ。1回限りの入場で終わってしまう客ばかりでは継続的な発展は望めない。満足度を高め「何度も行きたくなる場所」となれるか。2年目以降、真価が問われる。

「来園者のレゴランドへの理解度は大きく変わった」


【レゴランド・ジャパン社長 トーベン・イェンセン氏インタビュー】

トーベン・イェンセン氏

―開業から約9カ月がたちました。

「4月の開業当時と比べると、来園者のレゴランドへの理解度は大きく変わったと思う。しかし『来園者がスタッフなどと一緒に積極的に楽しむ』という日本にこれまでなかったテーマパークの楽しみ方が、まだ十分に浸透していない。新しいスタイルの楽しみ方を広げるのが最大のチャレンジだ」

―今後、客層を広げる考えは。

「開業したばかりなので、まずはターゲットの『2歳から12歳の子どもとその家族』の心をしっかりつかみたい。『インスタ映え』などの流行に走るのは簡単なことだが、ターゲット層を満足させないと次のステップはないと考えている」

―地域の観光戦略の中で果たす役割について、どう捉えていますか。

「愛知県が今、産業観光を推進している。地域で盛んなモノづくりを小さな子どもが知るツールとして『レゴブロック』はうってつけ。レゴランドが名古屋を訪れた子どもたちの学びの場となってほしい。レゴランドは子どもとその家族を取り込む点で他の観光施設とすみ分けができている。レゴランドの存在が他施設が家族料金などを導入するきっかけとなり、名古屋が国内外から多くの子ども連れに来てもらえる『遊びやすい町』になれば」
(文=名古屋・竹中初音)
日刊工業新聞2018年1月22日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
子どもの知育の場としてアピールし認知されてきたとのことですが、他のアミューズメントパークの例を見ると、ハードなリピーターになるのは大人というイメージがあります。

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