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ライオンの歯ブラシ製造工場の秘密

明石工場長・万代好孝氏に聞く
ライオンの歯ブラシ製造工場の秘密

新たに製造した自動検査システムで歯ブラシの毛先をチェックする

 効率の高い生産技術を極める―。ライオンの明石工場には、歯ブラシや歯磨き粉の製造設備が整う。近年「クリニカ」や「システマ」など高付加価値製品を展開している同社だが、製品の機能向上とともに、生産にも効率化に向けた技術が必要となっている。生産技術の開発から製品の製造・出荷まで、全体を取り仕切る万代好孝工場長に効率化への戦略を聞いた。(門脇花梨)

 ―明石工場の特徴は。
 「オーラルケア製品の製造に特化している。4月には洗口液の工場が稼働予定だ。規模が拡大するため、省力化して人材を有効活用する必要がある」

 ―強みはどんなところですか。
 「生産技術の開発スピードの速さだ。当工場には生産技術を専門とする従業員が常駐しており、現場と密接に連携できる。現場からニーズを出しやすく、また開発したモノのテストもすぐにできる」

 ―省力化においては、各工程の機械化が重要だそうですね。機械はどのようにつくるのでしょうか。
 「既存の機械をアレンジしたり、一から設計したり、現場と開発部隊で情報提供や意見交換しながらつくる。歯ブラシの場合、品種によっては複数の設備を使う。人手で行っている設備間の受け渡しを自社設計で機械化すれば省力化できる」

 ―最近の具体的な開発事例は。
 「システマなど高付加価値の歯ブラシの自動検査システムを開発した。従来、人の手で行っていた検査と手直しを機械化し、いわゆる“職人技”を汎用作業にした。今後、この工程に従事していた優秀な人材を再配置すれば、各自の能力を今以上に有効活用できる」

 ―商品と生産方法は別々に開発するんですね。
 「歯ブラシは研究開発本部(東京都江戸川区)でお客さまのニーズを実現できるか、性能発揮できる設計かという視点で開発する。完成した製品を受けて量産を検討するのは、明石工場の役割となっている」

 ―環境にもこだわりがあるそうですね。
 「電力消費量が低い機械の開発を心がけている。近年は、もともと低電力消費量の機械も増えている。当工場ではできるだけ省電力の機器を選定する。地球に優しい生産体制を目指す」

万代好孝氏

ポイント/機械と人間、役割分担


 明石工場は工場見学ルートを設置しており、地域住民を中心に一般人の見学を受け入れている。“誰に見られても安全かつ衛生的な工場”が、今や当たり前となっている。効率の高い生産体制も当たり前とするため、さらなる機械化に挑む。ただ、機械を使うには動かす人間が必要不可欠。また人にしかできない緻密な部分を扱える人材の育成も重要な課題となる。機械と人間の役割分担と双方の育成が、成長のカギを握っていそうだ。
日刊工業新聞2019年3月28日

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