ドコモやLINEも…通信・IT企業が狙うオンライン診療市場

厚労省、推進姿勢“確実に”

 医師が患者と対面せず、インターネットなどの情報通信技術(ICT)を用いて診察する「オンライン診療」が広がりそうだ。厚生労働省は18年にオンライン診療が適切に行われるための指針を発出し、さらに見直しを進めている。18年度診療報酬改定では「オンライン診療料」も創設した。厚労省のオンライン診療を広く認める動きが確実になっており、ビジネスチャンスを求めてIT企業の参入が相次いでいる。

 大手ITの中で注目を集めるのが、医療従事者向け情報サイト「m3.com(エムスリードットコム)」を運営するエムスリー。LINEとNTTドコモはエムスリーと共同出資企業を立ち上げ、エムスリーが抱える約27万人の医師と約16万人の薬剤師の会員基盤を活用した新ビジネスを展開する。

 LINEがエムスリーと立ち上げた「LINEヘルスケア」は、年内に対話アプリケーション(応用ソフト)「LINE」ユーザー向けに遠隔健康医療相談サービスを始める。LINE上で健康相談などをすると医師が回答する仕組み。身近なアプリを使うことで、オンラインで気軽に医療相談する文化を醸成する狙いもある。LINEヘルスケアの室山真一郎社長は「オンラインとオフラインの融合を目指す」と説明。法令整備の進展を見ながら、処方薬宅配やオンライン診療サービスも展開する。

 NTTドコモは「エンフィール」を4月に設立し、企業の健康経営を支援するサービスを始める。社員が抱える頭痛や肩こりといった健康不安を改善するサービスを、医師の監修の下で選定し提供する。社員の健康不安を解消して効率良く働ける環境を整備する。

 医療ITベンチャーの動きも活発。医療アプリケーション(応用ソフト)を手がけるアイメッド(東京都渋谷区)は、18年3月にオンライン診療サービスの提供を開始。スマートフォンからビデオ通話で診療を受けられ、予約は24時間いつでもアプリからできる。病院での診療や会計の待ち時間がなく、自宅にいながら処方箋や薬を受け取れる。押切静取締役は「初期費用を一切かけず始められる」と、他社との差別化を訴求しながら医療機関への導入を進めている。

 オンライン診療の本格化を見据え、今後もオンライン診療に関するサービスは活発化する。多様なサービスが生まれ、オンライン診療の情報基盤を握る企業もいずれ生まれるだろう。厚労省による法整備は、こうした変化の中で進む。

厚労省、医療全体の改革へ指針見直し


 日本の医療制度では診療は、医師が患者と直接向き合って行う対面診療を基本とする。この位置付けは変わらないが、15年に厚生労働省事務連絡で事実上解禁した。それまで離島やへき地など対面診療が難しい場合にのみ可能だった。18年度診療報酬改定では保険適用にもなった。

 さらに厚労省は18年に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を策定し、オンライン診療が患者の求めがあった場合に限り成立することや対面診療との組み合わせの必要性などを定めた。ただ現状では自由診療に対して保険診療はあまり伸びておらず、医療全体の改革につながらないとの指摘もある。

 厚労省は指針の見直しを進めており、対面診療との組み合わせや同一医師の診療原則の例外事項などを検討、オンライン診療の普及に向け手探りながら慎重に推し進めていく考えだ。

              

日刊工業新聞2019年3月28日

  

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