東北大が発表した異例の“長期ビジョン”の中身

国際競争力の強化に腰を据えて挑む

 東北大学は2030年に向け、あるべき姿と達成のための施策を提示する「東北大学ビジョン2030」を発表した。大野英男総長の4月の就任に伴うもので、里見進前総長が13年に公表した「里見ビジョン」以来5年ぶりとなる。これまでは各総長の在任期間(6年間)に限っており、10年以上の長期ビジョンの設定は初めてという。大学の国際競争力の強化が声高に叫ばれる中、腰を据えて変革に挑む。

「大胆に挑戦」


 テーマは「最先端の創造、大変革への挑戦『社会とともにある大学』としての東北大学」と定めた。27日、同大片平北門会館エスパス(仙台市青葉区)で記者会見に臨んだ大野総長は「伝統校としての立場に甘んじることなく、先導校として大胆に挑戦していきたい」と決意を示した。

 具体的には教育、研究、社会との共創(産学共創、社会連携)、経営革新の四つのビジョンとそれを実現するための19の重点戦略(中長期の方針)、66の主要施策(アクション)で構成される。

 教育の項目では「学生の創造力を伸ばす教育」など四つの重点戦略を設定。主要施策として19年度から学士課程の全学生を対象に人工知能(AI)・データスキル、グローバルマインドセット、アントレプレナーシップを学ばせる新たなプログラムや、アドミッションズ・オフィス(AO)入試の割合を19年度の24%から21年度には30%程度に拡大するなどの施策を公表した。

 研究項目では「世界の三十傑大学にふさわしい研究システム変革」など四つの重点戦略を設定。主要施策として、22年に同大青葉山新キャンパス(仙台市青葉区)で稼働予定の次世代放射光施設を活用した研究連携の推進などを目標に掲げた。同キャンパスは施設を核に「グローバルイノベーションキャンパス」として発展させる。

民間人材登用


 社会との共創に関する項目では、産学共創と社会連携でそれぞれ三つの重点戦略を設定した。具体的な施策として「東北大学オープンイノベーション戦略機構」を創設すると発表。大学を核として異分野の企業が共同研究できる自立型拠点を複数創出することを目指すとした。すでにあるスピントロニクス分野に加えて、ライフ・マテリアルサイエンスの二分野からスタートする。統括副学長(プロボスト)を機構長として民間から「クリエイティブ・マネージャー」を登用する。

 経営革新に関しては三つのビジョンを好循環させるための原動力としての位置付けで、自己収入の増加などガバナンス機能の強化を目標に掲げた。寄付金や産学連携、保有資産運用などによる収入を強化し補助金に頼らない「筋肉質な組織を目指す」(大野総長)とした。
(文=仙台・田畑元)
「ビジョン2030」について説明する大野東北大総長

日刊工業新聞2018年11月30日

  

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