猛暑の熱中症に備える、血管内冷却カテーテルとは?

生理食塩水をカテーテル内に循環、破れても体に害なし

 春の訪れとともに気温が徐々に上がってきているが、今年も気になるのが夏の猛暑による熱中症だ。消防庁によれば、2018年5月から9月における全国の熱中症による救急搬送人員数の累計は9万5137人と前年の5万2984人に比べほぼ倍増した。例年、熱中症による救急搬送人員数は5万人前後で推移していたが、昨年7月の記録的な猛暑が影響した形だ。この期間の熱中症による救急搬送者のうち、全体の約2・2%にあたる約3000人が長期の入院を必要とする重症で、160人が亡くなっている。

 熱中症は、高温や多湿な環境により体温が上昇して生じる健康障害の総称である。軽度であれば、涼しいところに移動し、十分な量の水分と塩分を補給して、安静にするなどで回復可能だ。場合によっては、氷枕や保冷剤で首筋やわき、足の付け根などを冷やすのも有効だ。
 
 しかし、重症化すると脳の体温調節機能に異常をきたし、体温が40度C以上に上昇、命に関わる危険な状態である「熱射病」となる。こうなると、できるだけ迅速に、体温を下げる必要が出てくる。

 その場合、体の外からだけでなく、体の内部から冷やす手法が効果的だ。冷却した生理食塩水などの輸液も有効だが、輸液可能な量に限界がある。

 旭化成ゾールメディカルの中心静脈留置型経皮的体温調節装置システム「サーモガードシステム」(図)では、カテーテルを体の中心静脈に留置し、そこに冷たい生理食塩水を還流させ、体を芯から冷やす。生理食塩水をカテーテル内に循環させる仕組みのため、輸液のように体液が増える心配は不要だ。

 また、生理食塩水が循環するため、万が一、カテーテルが破れても体に害はない。循環させる生理食塩水の温度をコントロールできるため、冷やしすぎの懸念も少ない。

 「サーモガードシステム」は、心肺停止蘇生後の脳障害を予防する低体温療法の適用もある医療機器だ。心肺停止した患者はその間、脳への血流が低下する。

 AED(自動体外式除細動器)を用いて蘇生した後、脳に障害が出ることがある。「サーモガードシステム」は体温を低く(12―24時間32―34度Cに冷却)抑え、心肺停止蘇生後の脳障害を防止する低体温療法にも用いられる。「サーモガードシステム」は、低体温療法でも熱中症でも、健康保険が適用される。

 20年には、夏の最も暑い時期に東京五輪・パラリンピックが開催される。熱中症は、重症化すれば命にかかわるが、適度な温度管理とこまめな給水や塩分補給を行えば予防が十分可能である。これから暑い夏を迎えるにあたり、予防を心掛けたい。
旭化成の「サーモガードシステム」

(文=毛利光伸<旭リサーチセンター主幹研究員>)

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日刊工業新聞2019年3月21日

  

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