親日国ベトナムだからといって日本式の会社制度は通用しない

 ベトナムは「親日」国であることを理由に、多くの日系企業はビジネスの展開がしやすいと考えている傾向がある。ベトナム人が日本に好意を抱く背景やその理由としては、先端技術を使った高い品質や繊細な食文化、アニメ・漫画などといったカルチャーなど、その理由は人によって千差万別だ。

 一方で、そのような「親日」が日系企業に対するビジネス上での評価に直接つながるわけではないということも事実だ。かつて日系企業であることや日本製であるだけで評価されていた時代もあったが、世代の変化とともに今ではそれは終わりを迎えつつある。

 現在でも一般的にベトナム人が「親日」の意識を持っていることは間違いないが、日系企業で働くとなると話は別だ。特に、日系企業で働くベトナム人にとって、いわゆる日本式の曖昧で明確さに欠ける人事や評価制度は受け入れがたい企業文化と思われている。

 現地の日系大企業の一部は人材が豊富で情報収集力にたけているだけでなく、他の海外でも事業を展開していることもあり、ビジネスの現地化に取り組むことで現地の人材からもその企業文化が受け入れられている場合もある。

 だが、海外進出の経験が少ない中小企業は「ベトナムは親日だからうまくいく」と思い込み、日本の評価や人事制度が現地でも通用するという考えで経営を行っている例が少なくない。それにより、人材の採用や定着に苦戦している企業も見受けられる。日本式の人事・評価制度が全く受け入れられないわけではないが、改善の余地はあるだろう。

 日系企業は今後、規模の大小を問わず世代ごとに異なる親日度の違いを理解するとともに、親日さを企業経営の強みにするような対応が求められる。明確な評価制度を導入し、著しい実績を上げた人材には明確な基準に基づいて昇進できるような仕組みを導入することだ。それにより、もともと親日であるベトナム人に対し、さらに日系企業への忠誠心を高めることができる。

 今後、ベトナムでは、かつて伝統的な生き方だった家族主義を重視し親日度も高い70―80年代生まれの人たちから、欧米への憧れを持ち個人主義の傾向が強い90年代生まれの人材へと世代交代が進む。今後のベトナム経済をけん引する90年代生まれの世代の主な日本の関心ごとは日本食やアニメ程度であるため、そのような彼らの価値観を理解し、人材の育成と活用に取り組むことが必要だ。

 経済成長が著しいベトナムでは、時代とともに変化する人材の価値観を敏感に捉えることが大切だ。そして、その価値観に適した制度を導入した経営を行うことで、ビジネスを成功に導くことができるだろう。

◇JACリクルートメントベトナム法人ディレクター レー・トゥイ・ユー・ウィン氏

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