地銀の人材紹介業参入が相次ぐワケ

人手不足の深刻化

 銀行が人材紹介関連業務に相次いで参入している。金融庁は昨年、金融機関の監督指針を改定し、銀行が取引先に対し行う人材紹介業務が付随業務として明確化された。人手不足が深刻化する中で、取引先の人材に関わる課題解決を後押しするのが狙いだ。金融面だけでなく、人材面でも取引先のニーズに柔軟に対応しようという動きが広がる。

 横浜銀行は昨夏、地元事業者の人材確保の取り組みを支援するとして、人材紹介関連業の参入を表明。顧客企業が求める経営幹部、専門技術人材、海外人材などの人物像を、同行の営業担当者らが聞き取った上で、人材紹介会社を通じてニーズに合った人材を紹介するという仕組みだ。年間100―120件程度の人材マッチングを計画しており、1月末までに50件の申し込みがあったという。

 このほか、秋田銀行が昨秋、パーソルホールディングスと人材マッチングサービスで業務提携すると発表するなど地銀を中心に人材紹介関連業の参入が相次いでいる。

 大手行ではりそな銀行が、5月をめどに日本人材機構(東京都中央区)と提携する。人材紹介や人材派遣、求人広告などは外部の協力会社が行う。りそな銀行には、人手が足りず確保に苦労しているといった相談が取引先から多く寄せられており、こうしたニーズに柔軟に対応できるように人材紹介関連業の参入を決めたという。人材相談をきっかけに、経営課題を共有することで取引先の成長を支援する。

 日本人材機構の小城武彦社長は「人材が欲しいという企業であっても、どのような人材が必要か明確に答えられる経営者は少ない」と指摘する。

 取引先企業は海外進出や販路拡大など新たな成長領域が求められる中、小城社長は「従来にはない外部の経営幹部が必要となってくる。人材不足はこれからもっと深刻になる」と予想しており、経営課題への解決を求めるニーズは増えていきそうだ。

 経済産業省によると、今後10年間で中小企業・小規模事業者の経営者のうち、約半数に当たる127万社で後継者が未定で、後継者不足も深刻化している。このまま放置すると中小企業の廃業が急増し、25年までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)を損失するという試算もある。

 日本の産業基盤を守るためにも、中小企業にネットワークを持つ金融機関による人材面の支援が期待されるところだ。

                 

(文=浅野文重)

日刊工業新聞2019年2月8日

  

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