上場企業の自社株買い、過去最高を記録した理由

株価の割安感アピールを狙う

 2018年度の上場企業による自社株買いが、過去最高を記録したことが明らかになった。今月もソフトバンクグループ(SBG)、ソニーなど大規模な自社株買いの公表が相次いだ。足元では米中貿易摩擦を受けた中国景気減速への警戒感が強まっており、18年度決算見通しでは上方修正よりも下方修正するケースが目立つ。先行きに不透明感が漂う中、株価の割安感アピールを狙った自社株買いが活発になっている。(浅海宏規)

 金融情報サービスのアイ・エヌ情報センター(東京都千代田区)の調査によると、今月13日15時までに公表された18年度の自社株式取得枠設定の金額は、約6兆5237億円にのぼり、過去最高を記録した。同社によれば、取締役会の決議によって自社株買いができるようになった04年度以降、これまでの最高は15年度の約6兆4950億円だったが、18年度は期中にも関わらずこれを上回った。

 自社株買いは増配などと並ぶ株主還元策の一つ。企業にとって発行済みの自社株式を市場から買い戻した場合、1株当たりの利益が改善するため、株主資本利益率(ROE)が向上するメリットがある。日本企業の収益力向上を目的として15年に、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の適用が始まり、株主や投資家への説明責任が一層求められるようになったこともあって、ここ数年、自社株買いは高い水準で推移している。

 一方で直近相次いでいる自社株買いについて、大和総研の太田珠美主任研究員は、「昨秋から株式市場が軟調となったこともあり、アナウンス効果を狙ったケースも出ているのではないか」と指摘する。

 現にSBGの孫正義会長兼社長は会見で「(株価が)安すぎると思う。どういう行動をするかと言えば、自社株買いをする」などと述べた。自社株買いで、割安にあることを市場に向けてアピールしつつ需給関係を改善することで、株価水準の上昇を狙う。ソニーは1000億円を上限とする自社株買いを8日に発表。同日のソニーの株価は反発し、終値は前日比で約4%上昇して取引を終えた。

 18年度通期見通しは製造業を中心に下方修正が目立ち「慎重な姿勢」(いちよし証券投資情報部の及川敬司銘柄情報課課長)が見て取れる。株価の重しがとれそうにない基調が続けば自社株買いはさらに広がりそうだ。

日刊工業新聞2019年2月15日

  

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