未来の駐車場には何が求められるのか

機械式駐車場首位・IHI運搬機械が実証実験を始めた

 国内の駐車場事業が転機を迎えている。約8000万台で頭打ちの自動車保有台数に対し、駐車場共用台数が右肩上がりに増え続け、地方都市を中心に稼働率の低い駐車場が街のにぎわいを損なわせている。2018年7月、国土交通省はまちづくりと連携した駐車場施策を総合的に取りまとめ、ガイドラインを地方公共団体に通知した。街のインフラとしての新しい駐車場のあり方とは―。機械式駐車場首位のIHI運搬機械(東京都中央区)が沼津工場(静岡県沼津市)で実証に乗り出した。

近未来の姿


スマートフォンで解錠するシステム

 都市部と郊外の境界に建設される「集約型スマートパーキング」。市街地を訪れた人々は、スマートパーキング付近でクルマを降り、目当ての百貨店まではシェアリングモビリティーで移動。マイカーは最先端の制御技術により自走して駐車場に格納される。屋上にはドローン離着陸拠点が設置され、物流拠点や災害時の救援物資受け取り拠点になる―。

 こんな近未来の駐車場を実現するべく、IHI運搬機械は18年7月、沼津工場に自走式立体駐車場を建設した。自動運転車を購入し、慶応義塾大学SFC研究所の大前学研究室と自走式駐車設備向け自動運転・自動駐車で共同研究も始めた。

 国交省のガイドラインは駐車場の量や場所、配置を適正する方策を示しており、有用性の低い駐車場について土地利用転換や集約の有効性を盛り込んでいる。一見、駐車場事業者にとってはマイナスしかない。しかし、「チャンスにあふれたビジネスだ」とIHI運搬機械の村井厚則理事・プロジェクト推進統括部長は語る。

沼津市と協定


駐車場はEVの二次電池から電気を供給する防災拠点としての役割も期待される

 見据えるのは都市インフラとしての駐車場だ。立体駐車場の構造の強さは東日本大震災でも証明されており、津波や洪水など緊急時の避難施設としての役割が期待される。水や食糧を備蓄し、ドローンで救援物資を受け取りつつ、駐車された電気自動車(EV)の二次電池から電気を供給するなど防災拠点としての役割を想定。沼津市とは災害時の支援協力で協定を交わした。今後も「徹底的に住民目線で改良を重ねたい」(村井理事)。

 自動運転車対応もポイントだ。自動運転車が普及すると、人は駐車場の外で降り、マイカーのみが駐車場内を走行することになる。駐車場内での乗降スペースは不要になり、高密度で駐車できる。

 ただ、立体駐車場内では全地球測位システム(GPS)が届かないなど課題もある。IHI運搬機械はベンチャー企業の画像認識技術を活用し、満車・空車の管理システムを開発中だ。天井に取り付けた測定カメラにより自動運転車を検出し、角度や位置を分析するものだ。

 世界でも駐車場側の対応例は限られており、議論が浮上するのは必至。知見も積むことで、政策に多大な影響を及ぼす可能性が高い。また、完全無人車の普及を想定すると、自家用車の駐車需要は間違いなく減る。オフィススペースへの転用も見据え、1階部分の天井を高くしているのも特徴だ。

大変革で優位


 モビリティーの世界は100年に一度といわれる大変革の真っただ中にある。「空飛ぶクルマが実用化された時、駐車場事業者として我々が優位なポジションにあると考えている」(同)。駐車にとどまらず、人やモノの移動のハブ拠点としての駐車場を実現できるか。沼津工場における挑戦は、駐車場の未来を占う試金石となる。
(文=編集委員・鈴木真央)

日刊工業新聞2019年2月11日

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。