自動運転を安全に、車業界団体が策定した評価検証案の中身

自工会が原案まとめる

 日本自動車工業会(自工会)は、高度自動運転システムの安全性を評価するための検証シナリオ原案をまとめた。高速道路を中心に割り込みや合流、加減速など31の運転シナリオを挙げ、道路上で起こり得る状況を網羅的にカバーした。すべてのシナリオで自動運転システムが安全に走行できると実証できれば、安全性を担保できていると考えられる。原案は欧州と連携して策定しており、国際的な安全認証制度設計の議論のたたき台になる。

 自動車専用道の直進部や合流部などの道路構造と、レーン変更の有無、加速や減速、割り込みなどの条件を整理し、31のシナリオ原案をまとめた。規制当局とシナリオごとに車速や路面の摩擦などの変数を設定し、さらに前後左右などの周辺車両との関係を掛け合わせて、網羅的なシナリオ体系を作る。

 これをシミュレーターや実車テストなどで検証し、自動運転システムの安全性を確認。さらに、これらの妥当性を検証するために現実世界の交通状況を計測してデータベースを作り、シミュレーターに反映する。

 システムの安全性を検証するには、道路上で起こるあらゆる状況を想定して対策する必要性があるが、それを検証する体系的な方法がなかった。自工会がまとめることで国内の規制側と開発側の協調が進む。欧州とも調整済み。自動車基準調和世界フォーラム(WP29)を通して国際的な安全認証の制度設計を主導していく。

 安全性は自動運転システムを実用化していく上で避けられないテーマだ。だが何をもって安全と評価するか、世界的にも考え方が定まっていない。自工会は道路上で起こるシナリオを網羅的に挙げて対策するという保守的なアプローチを選んだ。IT企業などの新興勢力にとっては負担になる可能性がある。

日刊工業新聞2019年1月30日

小寺 貴之

小寺 貴之
01月31日
この記事のファシリテーター

国交省などの認証側は自動運転中に起こるあらゆる交通シーンでの安全を求めます。これは海外も同様です。そのため自工会は網羅的に課題を探し、対策し、それを検証可能なアプローチを提案しました。米IT企業の開発スタイルのように試験走行距離や試験実績をベースに安全性を訴えるアプローチよりも、安全側に倒したアプローチをとっています。網羅的に対策した上で、その網羅性を検証するために、現実世界の交通状況を計測して希少事例をストックするという二重・三重の検証機構を設けました。これはベンチャーの体力ではやりきれない規模の安全性検証の仕組みになると思います。一方で自工会のアプローチが認証側に承認された訳ではありません。大学の先生などは安全を保証するために、より完璧な対策を求めます。完璧は存在しないため、自工会のアプローチは二つの中間にあたる現実策といえます。それでもIT出身の新興勢から見ると保守的に見えると思います。ですが、このくらいの安全検証の仕組みを設けないと、都市部や市街地での自動運転車の普及は実現しないと思います。

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